参院予算委で答弁する前田泰宏・中小企業庁長官=2020年6月11日、岩下毅撮影

 新型コロナウイルス対策の持続化給付金の事業を請け負った「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」と発注側の経済産業省との親密な関係がより鮮明になった。担当の経産省幹部が過去に海外で開いたパーティーに、現在の協議会幹部が出席していたことが判明。経産省が入札前に協議会と行った面談も、ほかの団体より長時間に及んでいた。

不信招く行為「していない」

 11日発売の週刊文春は、持続化給付金を担当する経産省中小企業庁の前田泰宏長官が大臣官房審議官だった2017年に米テキサス州のイベントに参加した際、近くのアパートを借りて「前田ハウス」と名付けてパーティーを開き、そこに昨年6月まで電通社員で、現在は協議会の業務執行理事を務める平川健司氏が出席していたと報じた。平川氏は今回の持続化給付金の委託問題への批判を受け、8日に電通副社長らと記者会見をした人物だ。

 11日の参院予算委員会では早速、立憲民主党の蓮舫氏が前田氏を攻め立てた。報道の真偽を問われると、前田氏は落ち着かない様子で「パーティーは毎日(開き)、関係者の意見交換はそこでやっていた」と認め、平川氏が参加していたことや別の場所でも平川氏と会っていたことも明かした。2人が以前から知り合いだったことがわかり、蓮舫氏は「国民の疑惑や不信を招く行為はしていないと言えるのか」とただしたが、前田氏は「そういう行為はしていないと認識している」と釈明。国家公務員倫理法や省内規などに反する行為はないとの認識を示した。

 経産省も11日時点で処分をする構えは見せていないが、野党は、経産省と協議会が癒着し、そのキーマンが前田氏だったのではとの見方を強める。

 前田氏は15年から大臣官房審議官として協議会と関わるサービス業を所管する商務情報政策局を担当していた。前田氏と平川氏は、その前から交流を始めたという。協議会は平川氏ら電通が中心となって16年に設立され、設立当日に経産省が公募した事業をその後受託した。その後も経産省発注の事業を次々と引き受け、これまでに計14件約1576億円分を請け負い、その5割にあたる808億円分が電通などに再委託されている。

 立憲民主党の安住淳国会対策委員長は11日記者団に、「業者側の接待、いろんな付き合いの延長に持続化給付金の委託があったとすれば、これは官製談合、接待漬けを受けていたことになる」と話した。(新宅あゆみ)

電通子会社も面会同席

 この日の委員会では、経産省が入札前におこなっていた応札予定者との面会の詳細も明らかになった。

 入札は4月8日に公示。協議会とコンサルティング会社の「デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー」が参加した。経産省が10日、野党側に提出した面会記録によると、協議会は3月30日と4月2日、3日の計3日間、各1時間ずつ中小企業庁側と面会。その際、後に事業の大半を協議会が再委託した広告大手電通の社員だけでなく、電通から実務の多くを外注された子会社電通ライブの社員まで同席していた。

 一方、デロイトとは3月30日に電話で接触し、面会は4月3日の1時間のみ。他1団体は4月6日に面会を10分したのみだった。

 蓮舫氏は、「平等な情報提供と言えるのか」と疑問視。前田氏は「ほぼ同等の内容」と釈明したが、協議会への発注ありきの出来レースだったのでは、との見方が強まっている。(伊藤弘毅)