新型コロナウイルスの第3次感染拡大懸念が強まっている。そんな中で個人的に気になっているのがこれから始まる第3次補正と来年度予算の編成作業だ。これから様々な議論が国会はもとより新聞、テレビなどメディアを通して繰り広げられるだろう。一番注目しているのは予算の規模だ。第3次補正と本予算を合わせた15カ月予算の規模がどの程度になるか、コロナの感染拡大防止対策とともに気になるところだ。結論から先に言えば、過去に例のないような大規模な予算の編成が必要だと、個人的には思っている。最大の懸念は財務省の“壁”だろう。第2次補正に盛り込まれた10兆円の予備費もまだ7割方未消化だ。医療体制の拡充強化に使うはずの予算が、なぜか未執行状態のまま残っているのか。いろいろな事情があるのだろう。だが、これが新たな予算編成の障害になりかねない。「使われない予算は必要ない」、財務省が言いそうなフレーズだ。

先頃発表された7−9月期のGDPは年率換算で前期比21.4%増と急増した。これを見てV字回復という人もいる。だが、実態は依然として水面下に深く潜り込んでいる。内閣参与に就任した高橋洋一氏によると、コロナ前のGDPに比べると30兆円、潜在GDPに比べて40兆円のギャップがあると指摘する。これを埋めるためには第3次補正で最低でも30兆円規模が必要になる。いくら予算をつけても消化できないとなれば、15カ月予算の中でその分を手当てすればいいのだが、本予算に分散するとどこまでがGDPギャップの穴埋めなのか分からなくなる。経済運営で一番大事なのは分かりやすだ。第3次補正で最低でも30兆円の予算を組む、それが一番国民にとって理解しやすいだろう。中身は専用病院の建設や医療関係従事者に対する手当ての大幅増増額、困窮家庭に対する特別給付金の再交付、Go Toトラベルの増額ももちろん補正や本予算の対象だ。

なぜ予算規模の拡大にこだわるのか、理由ははっきりしている。米国で民主党政権が誕生するからだ。バイデン氏は予備選、本選挙を通して積極的な財政運営を強調している。その政権の要ともいうべき財務長官にはイエレン前FRB議長が就任する。イエレン氏はもともと労働経済学の専門家。雇用の確保を最上位の政策目標に掲げている人だ。バイデン政権は一方で富裕層に対する増税も視野に入れている。だが、こちらは共和党がすでに上院で50議席を確保。残る2議席は1月5日に行われるジョージア州の再選挙に持ち越された。仮に民主党が2議席を独占しても議席配分は50対50。増税法案を上院で通過させるのは簡単ではない。増税法案が難航しても民主党の「大きな政府」姿勢は変わらない。おそらく万難を排して積極財政が繰り出されるだろう。そうなれば流れは「円高」。日本に再度円高不況が襲いかかってくる。不況で増えるのは自殺者だ。コロナの死者を上回る自殺者が出る前に日本は、万全の景気対策を施す必要がる。