日本の首都というよりは2020東京オリンピック・パラリンピックの開催地といった方がいいだろう。その東京の将来を託す都議選が終了した。何よりもまずコロナ禍での選挙が無事終了したことを喜ぶべきだろう。結果は勝者も敗者もいない、争点も論点もない選挙だった。議席が分散した結果、東京都の将来像もあやふやになった。ポストコロナで東京都はどこに向かうのか。混迷する首都の議会に合わせるように日本の行方もさっぱり見えてこない。10月までに実施される総選挙の前哨戦。この結果から何を読み解けばいいのか。混迷する日本を象徴するような選挙だった気がする。だが、この選挙の裏で激しいツバ競り合いがあった気がする。結果がぼやけている以上、あとは想像力で補うしかない。

キーパーソンは小池百合子東京都知事だ。都議選公示直後に過度の過労で入院。生みの親であり、顧問を務める都民ファーストの応援要請にも応えず、病院での療養生活に入る。入院を延長したあと30日(水)に退院、ただし活動はテレワークに限定と医師の指導がはいる。その小池氏はたからみていると、噂されている国政復帰を優先、自ら育てた都民ファーストを突き放したようにもみえた。だが、一寸先は闇というのが政治の世界。都議選最終日の3日(土)、突然、都民ファ代表の荒木氏が立候補している中野選挙区に登場した。バーチャルではない。リアルの本人が選挙区に生身をさらしたのである。荒木代表はTwitterで「小池知事は息も絶え絶えだったが、最終日に駆け付けてくれた」(時事通信)と感謝。これが都議選最終盤の巻き返しにつながった。荒木氏も「(小池氏とともに)『都民のための都政を手放してはならない』との訴えが、支援拡大につながったと思う」と分析した。

小池氏のたった1回の応援が都民ファを救った可能性は大きい。大敗を免れ31議席を確保して面目を保った。自民党は33議席を獲得、第1党の座を確保したものの、事前の大勝予想を大きく下回った。加えて目標の自公で過半数も達成できなかった。党内には大きな敗北感が漂っているだろう。小池氏が二階幹事長と組んで本気で国政復帰をめざすかどうかわからない。オリパラ中止を訴えた共産党と立憲民主党も伸びた。だが。オリパラが争点だったわけではない。都議選の裏で安倍前首相、二階幹事長の熾烈な権力争いが続いている。これに岸田前政調会長、菅首相などが絡んでいる。何を争っているのか。要するに権力闘争である。その証拠に表の世界では中国の人権問題も北朝鮮の不穏な空気も、河井事件に絡んだ1億5000万円の使途不明金も争点にすらなっていない。オリパラ開催だけが暗黙の了解。その裏で何が・・・?