反政府組織タリバンが政権を奪取したアフガニスタン。今朝のニュースの大半が一夜明けたアフガニスタンの生々しい情勢で塗りつぶされている。バイデン米大統領は戦わずして敗北した政府軍の不甲斐なさを批判する一方で、米軍撤退という自身の判断の正当性を主張している。昨日はトランプ前大統領と責任の擦り合いを演じていたが、政府軍崩壊のあまりの速さは予想外だったようだ。ロイターは「事態は予想外に急展開したのだろうか。一体何が起きたのか。アフガニスタンの政治指導者たちは諦め、国外に脱出した。アフガニスタン軍も諦め、時に戦うこともしなかったと述べた」と伝えている。この記事を読みながら「なにをいまさら」という気がした。米軍のアフガン撤退戦略はものすごく杜撰だったのではないか、そんな印象をもった。結果はトランプ大統領でも同じだったのか、歴史につきまとう“if”だ。

首都カブールの国際空港は緊迫感に包まれていた。タリバン制圧をうけて空港には避難民が殺到した。ロイターによるとアフガンの民放最大手トロニュース(Tolo news)は、カブールのハーミド・カルザイ国際空港の様子をとらえたソーシャルメディアの動画を放映。ソーシャルメディアに投稿された動画や写真には、数百人の人々が空港の滑走路に入り、国外に脱出しようとタラップに登ったり、機体の上に乗ったりする姿がとらえられているという。地元ニュースのアスバカは、航空機の機体にぶら下がっていた人たちが、航空機が離陸した後に地上に落下して死亡したと報道したという。飛行機から落下する恐怖よりもタリバンに拘束される恐怖の方が大きいのだろう。ガニ政権や米国を支持してきたアフガンの人たちにとって、タリバン支配下での生活は命懸けなのだろう。政権がひっくり返ることのこれが現実だ。

国際政治も一気に動き始めた。ロシア外務省は現地大使館を通してタリバン上層部と接触を開始していることを明らかにした。「外交関係者の安全についてまず話し合う」とのこと。タリバンとの関係づくりで先陣を切ったということか。いや、以前から親密な関係を維持していたということだろう。ラブロフ外相はブリンケン米国務長官、中国の王毅外相と相次いで電話会談をおこなっている。英国のジョンソン首相はマクロン仏大統領と電話会談、アフガン情勢を討議するため主要7カ国(G7)首脳によるバーチャール形式での会議を数日中に開催する意向を表明した。国連のグテレス事務総長は安保理で「アフガニスタンにおける世界的なテロの脅威を抑制するために全ての手段を用いる」よう呼び掛けた。中国の耿爽国連次席大使は「アフガニスタンは二度とテロリストの温床になってはならない」と呼びかけている。イスラム原理主義はこの先、どこまで広がるのか。国際社会はタリバンと共存できるのか、新たな課題を突きつけられた。