【北京=大木聖馬】中国の 習近平シージンピン 政権は、タリバンが主導する形でのアフガニスタンの政治体制構築に協力していく方針だ。復興プロセスを後押しし、米軍撤収後の中央アジア地域での影響力拡大につなげていくとみられる。

 中国外務省の 華春瑩フアチュンイン 報道局長は16日の記者会見で、「アフガン国民の意思と選択を尊重する」と述べ、タリバンによる武力制圧を事実上、容認した。「引き続きアフガンと友好協力関係を発展させ、和平と復興のために建設的な役割を果たしたい」とも述べた。

 習政権はタリバンがアフガンで勢力を拡大させる事態を見据え、関係構築を着々と進めてきた。7月下旬には、タリバンのナンバー2を天津市に招き、 王毅ワンイー 国務委員兼外相が会談した。政府ではなく対立勢力のメンバーと会談するのは異例で、王氏は、タリバンを「アフガンの重要な軍事・政治勢力」と持ち上げた。

 習政権はアフガンが不安定化し、隣接する新疆ウイグル自治区にテロ組織が流入する事態を強く警戒している。習政権はタリバン側が期待する経済支援をテコに、テロ組織との関係断絶を強く求めていく考えだ。

 また、中露や中央アジアの国々で構成する上海協力機構の枠組みを通じて、アフガンの和平プロセスへの関与を強め、地域での影響力拡大を図るとみられる。

政権承認 露「急がず」

 【モスクワ=工藤武人】ロシアのザミル・カブロフ大統領特使(アフガニスタン担当)は16日、ロシア通信など露メディアに、タリバンをアフガンの政権として承認するかどうかについて「結論は急がない」と述べた。ロシアは中央アジア諸国にイスラム過激派が流入する事態を警戒しており、タリバンをけん制する意図がありそうだ。

 カブロフ氏は、タリバンのカブール制圧に関しては「米国や北大西洋条約機構(NATO)がアフガン政府軍の力を過信し過ぎた」との見方を示した。

 ロシアはアフガン和平を巡り、タリバンをモスクワに招くなど独自の関係を構築してきた。カブロフ氏によると、在カブールの露大使館はタリバン側の保護下に置かれており、大使館員に危害を加えないとの確約を得ているものの、大使館員の一部は退避させ、規模を縮小する。17日にはロシアの駐カブール大使がタリバンの治安担当者と会談するという。

欧州各国 退避急ぐ

 【ブリュッセル=畠山朋子、ベルリン=石崎伸生】欧州各国はカブールの大使館を閉鎖し、大使館員らの国外退避を急いでいる。

 フランスのジャンイブ・ルドリアン外相は15日の声明で、自国民の退避支援のため、中東のアラブ首長国連邦(UAE)に仏軍航空機や部隊を配備すると表明。大使館機能はカブール空港近くに移転させた。

 ドイツ政府は、軍の輸送機をカブールに派遣した。独DPA通信によると、16日朝までに、大使館職員ら約40人が米国の航空機で中東カタールに退避した。一部はカブール空港の軍事地区に残り、ビザ発給などの作業にあたるという。

 英政府が派遣した英軍部隊600人はカブールで活動を始めており、大使館員らを乗せた帰国の第1便は15日夜に英国に到着した。オランダ、スペイン、スウェーデン、デンマークなども大使館を閉鎖した。

 ジョンソン英首相は「どの国にもタリバンを承認してほしくない。同じ考えを持つ全ての国が結束してほしい」と述べ、タリバンを正当な政権として認めないよう各国に呼びかけた。