イスラム教の過激組織タリバンが支配したアフガニスタン。連日国外脱出活動が続く首都カブールの国際空港できのう、自爆テロが発生した。朝日新聞(Web版)によると米中央軍は「米軍兵士13人が死亡し、18人が負傷した。米軍などはイスラム主義勢力タリバンと敵対する過激派組織『イスラム国(IS)』戦闘員による自爆テロとみている。アフガニスタンの保健省の当局者は米CNNの取材に対し、少なくとも市民ら60人が死亡し、140人が負傷したと語った」とある。脱出活動が続くさなかでの悲劇である。犯人はISの一派、ISIS-Kと報道されている。どんな組織なのだろうか、ど素人にはアフガニスタンをめぐる複雑な相関図を読み解くのは至難の技だ。とりあえず朝日新聞と産経ニュースのデジタル版で関連記事を探してみた。

朝日新聞はテロに対する西側諸国の反応を細かに伝えている。卑劣な自爆テロを非難すると同時に、引き続きアフガン支援を続けるとの各国首脳のコメントや国連など国際機関の動きをフォローしている。だが、アフガニスタンをめぐる複雑な勢力関係に関する解説は見当たらなかった。イスラム教過激派で原理主義を掲げているタリバンと米国の関係はおおよそ想像がつく。だが、イスラム国やISIS-Kとの関係はどうなっているのだろう、そこが知りたいのだ。産経ニュースで探してみた。「アフガン自爆テロ、『ISIS-K、米タリバンの〝信頼なき協力〟標的』」との見出しの記事がすぐ目に飛び込んできた。「実行したとみられるイスラム教スンニ派過激組織『イスラム国』傘下の『ホラサン州』(ISIS-K)には、対米ジハード(聖戦)の成果を誇示することで競合するタリバンの正統性をおとしめて混乱を助長するとともに、米国とタリバンの不信を増幅させる狙いがある」、単刀直入に切り込んできた。

「撤収期限の8月末が迫るなかで米国は、タリバンとの間で、外交団や軍のレベルで『日常的な連絡態勢』(国務省)を構築した」。そのことは連日テレビで報道されている。国務省のスポークスマンが米軍の撤退期限の延長要請を退ける際に、「ISの脅威が迫っている」と説明していたことも記憶にある。そんな中で米国とタリバンの双方を敵視するISIS-Kにとっては、「今回のようなテロで混乱を長期化させることが利益になる。正統なジハード(聖戦)勢力とのイメージを強化し、タリバンの求心力低下も期待できるためだ」。なるほど、分かりやすい。今回のテロでは、「自爆犯がタリバンによる検問をすり抜けて現場に接近していることから、タリバン兵にIS-Kの協力者がいる可能性も否定できない」。米国とタリバンが脱出作戦をめぐって“信頼なき協力関係”を続ける中で、タリバン兵の一部はIS-Kとの信頼関係に基づいて自爆テロに手を貸す。アフガン情勢は見えないところで動いている気がする。