今週から来週にかけて中国恒大集団の債券がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が懸念されている。9月下旬の利払い日に支払いができず、現在は1カ月間の猶予期間に入っている。この間に利払いが実行されないと債務不履行と認定され、金融機関との取引が停止される。これは事実上企業活動の停止を意味するため、デフォルトは実質的な倒産とみなされている。恒大集団集団が抱えている債務は日本円に換算して30兆円を超えているようだ。倒産となれば恒大集団集団にと止まらず、関連企業の連鎖倒産に発展しかめない。欧米先進国と違って中国はデスクロージャー(企業の情報開示)が極めて不十分である。関連倒産がどこまで拡大するか、専門家でも全貌は把握できない。不透明な情報開示が必要以上に不安を増幅する。そんな状態が恒大集団集団をめぐる懸念の一つになっている。

いつもなら中国政府がさりげなく方針を示すのだが、今回に限ってはどういうわけか政府も人民銀行も沈黙したままで、関連情報はほとんど出てこない。これも市場の不安を増幅する一因だ。そんな中で昨日(17日)、中央銀行である人民銀行の易綱総裁が重い口を開いた。ブルームバーグ(BB)によるとグループ・オブ・サーティ(G30)がバーチャル形式で開催した銀行セミナーに出席したのだという。この組織は国際金融問題に関して政策提言を行なう民間団体。そこで総裁は中国恒大の問題は「若干の懸念をもたらす」としながらも、「全体として、われわれは恒大のリスクを封じ込めることが可能だ」と語った。人民銀行の総裁が「リスクは管理可能、心配ない」と強調したのである。普通ならこれで事態は改善する。マーケットはリスクオフからリスクテイクへと前向きになる。

だが、懸念は一向に払拭されそうにない。恒大集団以外にも中国は電力不足、消費の低迷、IT企業への規制強化、学習塾の事実上の禁止、青少年に対するゲーム規制の強化、上場基準の強化など次から次へと規制強化を打ち出している。習近平主席が提唱する「共同富裕」政策に基づいた格差是正に国をあげて取り組む姿勢を示している。要するに経済活動に強烈なブレーキをかけ始めているのだ。これでも中国経済は想定通りに成長するのだろうか。今朝発表された7~9月期のGDPは、実質ベースで前年同期比4.9%増にとどまった。伸び率は前期(7.9%)を下回り、2四半期連続で減速。電力不足や消費の低迷など様々な懸念要因が足を引っ張っていることを伺わせる内容だ。コロナが収束する一方でで、中国経済の低迷という新たな懸念が加わったともいえる。それでも易総裁は今年の成長率を約8%と予想している。中央銀行総裁が何をいっても一向に懸念はなくならない。それがまた懸念材料になる。悪循環が始まっている。