争点となっていた18歳未満に対する給付は「全額現金も可能」とすることで決着した。岸田首相が昨日の予算員会で表明、政権内部の混乱と地方自治体の不満はひとまずこれで収束しそうだ。全額現金方式は現金・クーポン方式と並列で認められたが、選択肢としてクーポンも残っている。このあたりがメンツにこだわる政治家の実体だろう。本質を無視してメンツにこだわる政治。世界に遅れをとる日本を象徴しているようでもある。もう一つ今回の問題で気になったのは岸田首相をはじめ自民党や公明党の与党議員、予選編成を担う財務省高級官僚の金銭感覚だ。1000億円近い事務費に何の異議も唱えない支配層の感覚は、ひょっとすると本予算でもそのまま発揮されているのかも知れない。100兆円を超える本予算にも壮大な無駄が含まれているのではないか、勘ぐりたくなる。

事務費は今年の春の補正予算編成の際にも問題になった。たしか雇用調整助成金に関する事務手数料だった気がする。こちらは1000億円近い事務費が、電通の複数の関連会社に支払われていたというもの。国会でも問題になった。同じことがクーポンの配布でも起こっている。財務省の矢野事務次官は総選挙を前に、与野党がバラマキ合戦をしていると批判した。事務費の過大な計上はバラマキに該当しないのだろうか。矢野次官には「バラマキとは何か」、その定義を明確にしてほしいと思う。一昔前まで財政の乗数効果ということがよく言われた。財政を1単位増やしたときに、GDPがどれだけ増えるかを示した数字だ。ど素人の直感では乗数効果が低い予算はバラマキに近いと思っている。事務費の乗数効果はどうなのだろう。

コロナ対策として実施される現金給付は乗数効果が高いのか低いのか、問題はそこだ。麻生副総裁は常々「現金給付は預金に回り消費を刺激しない」と批判してきた。この主張は感覚的で理論的な精緻さに欠けている。同じように感覚的だが、個人的には現金給付の消費化率は困窮世帯や貧困世帯ほど高くなる気がする。だとすれば乗数効果が高い現金給付とは低所得者層向けということになる。クーポンの乗数効果はどうか。推測だが印刷需要喚起など、ものによっては思った以上に乗数効果が高いのではないか。政府ならびに支配層は政策効果をきちっと見極めてほしい。そして乗数効果の高い施策をコロナ対策として盛り込めばいい。GoToトラベルやGoToイートは乗数効果が高そうだ。タクシークーポンがあっていいかもしれない。事務費ではなく政策費として計上すればいいのだ。金銭感覚の鈍い為政者は、需要を喚起のする政策の立案能力も低い気がする。