平和の祭典である冬季五輪が閉幕した。日本選手団の活躍はすごかった。金3個、銀6個、銅9個、合計18個のメダルは過去最多。小林陵侑、平野歩夢、高木美帆、金メダリスト3人をはじめすべてのメダリストに感謝。同時に敗者の活躍も強烈に印象に残った。高梨沙羅の失格、高木菜那の転倒は人々の記憶に強烈に刻まれた。アスリートにまつわる悲劇にも価値がある。場外の話題も豊富だった。ハーフタイムの決勝2本目。平野は「人類史上最高難度」とアナウンサーが絶叫する「トリプルコーク1440(軸を斜めにした縦3回転、横4回の回転技)」を決めたが順位は2位。金メダルを胸に平野は「採点方法を改善すべきだ」と注文をつけた。ニューヨークタイムズも「審判団は何をみていたいのか」と不信感をあらわにした。最先端で日々技を磨くアスリートに審判団の目が追いつけない現実。国際舞台で冷静に問題点を指摘する選手の誕生、審判団もジャッジに磨きをかけざるを得なくなる。

女子のビックエアーで4位になった岩渕麗楽に各国の選手が駆け寄るシーンも圧巻だった。一回目、二回目、思うように点数を伸ばせなかった日本期待の岩渕。三回目にメダルを狙って勝負に出る。挑んだのは超大技「トリプルコークアンダーフリップ1260」。女子ではまだ誰も成功したことがない大技だ。果敢に挑んだ岩渕だが惜しくも着地で転倒、4位に終わる。固唾を飲んで見守る選手たち。転倒した岩淵に皆が駆け寄り祝福した。転倒を慰めたわけではない。果敢に挑んだチャレンジ精神を讃えたのだ。これぞオリンピックを象徴する一幕だ。高難度の技にチャレンジする精神を皆で讃えあった。国旗を背負って競い合う選手たちには国境はない。だが、光り輝くアスリートたちを圧殺するかのように五輪会場を覆ったのは、緊迫するウクライナ情勢をめぐる米ロの情報戦争だった。あること無いこと、悪態のかぎりを尽くして相手を罵り合う非難合戦はさながら“戦争ごっこ”のようだった。

プーチン大統領は五輪閉幕を待っていたかのようにウクライナ東部の親ロシア地区を独立国家として承認。挙句の果てには同地区の安定を維持するためと称して軍隊の派遣を命じた。これを受けてマーケットはドル高・円安、株高へと転じる。ロシアの侵攻が東部地区にとどまれば、米ロの対立は泥沼化しない。これがマーケットの解釈だ。これはバイデン大統領がかつて口をすべらした「小さな侵攻なら経済制裁も小さくて済む」に通じる。これが事実なら民族、宗教、歴史、価値観などをめぐって対立する米ロの紛争は、あらかじめ決まっているシナリオの元に管理されていることになる。結局はおたがの主張や立場、面子を守り合う“紛争ごっこ”にすぎない。だったら最初からやるなと言いたくなる。アスリートはリスクをとってメダルを争っている。プーチン、バイデンの両大統領はお互いの権力と面子を守るために戦っているふりをする。健全なアスリートが集う五輪を習近平主席はじめ世界の政治屋がこぞって利用しあっている。唾棄すべき現実だ。