バイデン大統領来日とこれに関連した一連の首脳外交が終了した。日米首脳会談では同盟強化を確認、経済連携の新しい枠組みとしてIPEFが発足した。クワッド首脳会談では中国を意識したインド太平洋の航行の自由と安全の確保が改めて4カ国首脳の間で確認された。プーチンのウクライナ侵攻にともない国際情勢が波乱含みとなる中で、価値観を共有する西側陣営としてはロシア、中国、北朝鮮といった強権国家に対する包囲網の確認ができたわけで、一連の首脳会議はそれになりに成果があった。とはいえ、台湾有事の際に米国は軍事介入を行うのか否か、バイデン大統領は記者の質問に「イエス」と答えたが、これが米国の政策変更を意味するかどうか依然として曖昧のままだ。IPEFは西側の結束強化に繋がるのか、それも分からない。

日米壕印にとって首脳会談は、日本ならびにインド太平洋地域をめぐる安全の確保と、力による一方的な現状変更の阻止を再確認することが主たる目的だった。だが、クワッドの4カ国というよりこの会議の隠れた主役はロシア、中国、北朝鮮の3カ国だった。バイデン氏の「イエス」発言に中国は猛烈に噛み付き、中国とロシアが連携して日本周辺の上空で偵察飛行を行った。おそらくロシアと中国に連携しているのだろう、北朝鮮も26日未明にミサイルの発射実験を行った。日本を舞台に繰り広げられた一連の首脳会談は、ウクライナ戦争を遠景に改めて西側陣営と強権国家の深刻な対立を浮き彫りにした。折からスイスで開催されているダボス会議で、著名投資家のジョージ・ソロス氏が第3次世界大戦の可能性に言及した。西側によるウクライナへの強力な武器支援などを見ていると、可能性どころか第三次世界大戦はすでに始まっていると見た方がいいのかもしれない。

ロイターによるとソロス氏は以下のような発言をしている。「今回の侵攻は第三次世界大戦の始まりかもしれず、われわれの文明は生き残れないかも知れない」、「われわれの文明を維持するための最善かつおそらく唯一の方法は可能な限り早くプーチン氏を打ち負かすことだ」。中国については「習近平国家主席の『ゼロコロナ』戦略は失敗し、上海を『反乱寸前』に追い込んだ」。「習氏は3期目続投を目指す中で影響力を失いかねない」。敵も盤石ではない。西側陣営はこの機会にロシアと中国を分断する戦略が必要だった。ウクライナ戦争を見るまでもなく、結果は完全に逆になっている。米国は開戦前に安全保障の確認を求めていたロシアを懐柔すべきだった。そうすれば北朝鮮もしゃしゃり出てはこなかった。バイデン大統領は戦略を見誤ったのではないか。クワッドで日米はインドの引き止めに躍起だった。隠れた大国インドがロシア側につけば、「われわれの文明は生き残れないかもしれない」。ロス氏の発言がやけに気になった。