けさNHKが「大手商社 森林への投資強化の動き 背景に脱炭素や木材需要増」とのニュースを流していた。なるほどと思いつつも、ちょっと気になったのでネットで調べてみた。案の定というべきか、同じようなニュースが過去にもあった。「商社、森林事業を拡大、新興国の建材需要にらみ」がそれ。日経新聞(Web版)が2019年9月16日 2:00に配信している。NHKのけさのニュースは三井物産が森林の管理や木材販売を手掛けるオーストラリア企業の株式を新たに追加取得、持株比率を49%まで引き上げるというのがメイン。関連して住友商事がニュージーランドに所有している森林の面積を拡大する。丸紅はインドネシアで生産性の高い品種を植林する。2つの内容が追加的に書き込まれている。この二つは日経の焼き直しに過ぎない。ニュースと言いながら、3つのうち2つは古い話題のように見える。

日経新聞の2019年の記事で取り上げているは住友商事と丸紅。2年9カ月の間を置いてNHKは日経新聞の後追いをしたように見える。別に日経新聞を丸々コピーしているわけではない。菅前総理の脱炭素宣言の前と後という時間軸のずれもある。NHKの記事に文句をつけようと思っているわけでもない。まして今日は月曜日。新聞的には暇ネタで埋め合わせる記事が多くなるのは致し方ない。ただ、せっかく記事にするなら、どうしてもっと国内に目を向けないのだろう、そう思っただけである。日本は周知のように国土の70%弱が森林に覆われている。世界的にも稀に見る森林大国なのだ。だがビジネスとしての林業はさえない。峻厳な地形がビジネス化を阻み、少子高齢化に伴う労働力不足で働き手が不足している。大手商社は林業への投資として海外にしか目を向けない。

岸田首相は「新しい資本主義」の具体策として官民合わせて今後の10年で150兆円を脱炭素分野に投資するとぶち上げた。大手商社の動きはこれを意識しているのかもしれない。そこは書いてないからわからない。記事を通して伝わってくるのは「海外」だけである。国内をどうするのか、まったく触れていない。「新しい資本主義」が目指すのは、日本経済の活性化である。国内での森林投資は、めぼしいものがほとんどない。森林を取り巻く環境が林業のビジネス化を阻んでいる。補助金がなければ誰も林業に手を出さないだろう。そこをどうするのか、林野庁は「林業の成長産業化」を掲げているが具体策は見えない。大手商社は海内投資を積極化させている。どうして国内に目を向けないのか、投資しない理由を探るのもメディアの重要な仕事だ。