6日にロイターが配信した記事が面白かった。タイトルは「焦点:中国ゼロコロナ転換、揺れた習氏と早期解除目指した李強氏」。ゼロコロナ政策に反対するデモが過激化する中で、動揺する習主席とゼロコロナ撤廃に向けて敢然と突き進む李強氏。中国のトップ2人の力関係が赤裸々に描かれている。李強氏は現在開催中の全人代終了後に首相に就任する。習氏の長年にわたる側近で、中国共産党の序列はNo2。個人的には習氏ベッタリのおべんちゃら政治家と思っていた。が、どうしてどうして、政策に対する理解力と推進力、加えて人並み以上の強い意志を持っている。正しいことを推進するためにはトップをも恐れない。忖度だけの側近ではないようだ。ゼロコロナ撤廃に向けた日和らない姿勢は、習主席より政治家としての資質は上かもしれない。同時に中国に君臨する習近平という政治家の、あまりにも凡庸とした素顔が浮き彫りになった。この記事を読んで“李強恐るべし”の印象を受けた。

ロイターによるとは「昨年11月、中国では新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込める『ゼロコロナ』政策に対し、前例のない抗議活動が広がった。中国共産党の序列2位にのし上がった政治局常務委員の李強氏は、このタイミングを逃さなかった」と書き始める。「政府高官と医療専門家らはその数週間前から、ひそかにゼロコロナ政策の解除計画を策定していた。2023年3月に通常の状態に回帰すると宣言することを目指し、22年末に向けて徐々に規制を解除していくという内容だった」という。この時点で李氏は「解除はもっと急を要する」と考えていたようだ。そして経済への影響と抗議活動に対処するため、12月にはロックダウン(都市封鎖)や大規模検査など鉄壁だった規制が突然、全て解除された。あまりに唐突な解除に中国は大混乱に陥る。緩和措置の実施後に感染者が急増したことを受け、「習氏の気持ちは揺らぎ、ゼロコロナ政策への回帰を望むようになった」という。

11月半ば、習氏は訪問先の東南アジアから国内当局者らに、ゼロコロナ政策を決然と実行するよう命令する。習主席が帰国すると李氏は「再開ペースを緩めるよう迫る習氏に抵抗した」とある。中国共産党の絶対的なトップ、これに逆らうことの意味を李氏が知らないはずがない。李氏を後押ししたのは11月末に新疆ウイグル自治区で起こった火災だ。暴動に発展したこの火災によって、「ゼロコロナ政策」に絶対的自信を持っていた習氏の心が折れる。そしてコロナ対策の全てを李氏に委ねるのだ。後に習主席石は、ゼロコロナ撤廃は「致死率の低いオミクロン株が主流になった」ことによると説明する。いやはやなんとも独裁者らしからぬ理由だ。新華社によると、習氏は今年2月16日、幹部らとの会議で新型コロナに対する「決定的な勝利」を宣言。共産党の判断と決断は「完全に正しく」、有効で、国民に歓迎されたと胸を張った。もちろんゼロコロナへの回帰を命じた自身の心の動揺については、一切触れなかった。