[上海 6日 ロイター] – 中国政府は国内の半導体業界が米国の対中輸出規制を克服するのを支援するため、巨額の資金支援を行う計画だ。しかし中国の半導体業界は、技術革新で後れを取りバリューチェーンの末端にはまり込むというサイクルを打ち破らない限り、資金支援だけでは米制裁による苦境を脱せないと専門家はみている。 

ロイターは昨年12月、中国政府が国産半導体製造装置の購入に充てる補助金など、総額1400億ドルの半導体産業支援策を講じたと報じた。リソグラフィー技術を持つ上海微電子装備(SMEE)など国産メーカーは恩恵を受けそうだ。

しかし欧米の競合メーカーは何世代分も先行しており、資金支援だけでは追い付けない。SMEEなど国内の製造装置メーカーの主な販売先は国内メーカー。台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子といったメーカーの最先端製造施設とつながりを持たないため、自前で技術的な課題を解決し、バリューチェーンを遡上するのは難しいと専門家は指摘する。

バーンスタイン・リサーチのマーク・リー氏は「こうした状況のせいで研究・開発(R&D)分野における進展を生産の大量化に生かせず、より高度な技術を習得することもできない」と述べた。

半導体製造装置業界は航空業界と似ている。メーカーは顧客と密接に連携、1台1億ドル以上もの装置について、設置や調整、メンテナンス、修理など長期サービスを提供する。このような連携によってノウハウが共有され、それが両社の技術的な進歩を支える。

<解決困難>

SMEEなど中国メーカーでエッチングなどの工程に従事した経験を持つ人々は、供給網がさらにグローバル化し、技術がより複雑になり、オランダのASMLなどが市場を独占するまでは、市場の参入障壁はそれほど高くないように見えたとロイターに語った。

SMEEは国営電力会社の幹部が2002年に立ち上げた。同社の元技術者によると、経営陣にリソグラフィーの経験を持つ幹部はおらず、従業員は中古の装置を購入して研究し、公開された特許や論文を読み込んで初号機を作ったという。

SMEEはASMLに20年遅れで、シリコンウエハーに90ナノメートルの極小回路パターンを印刷できる装置の製造に漕ぎつけた。技術的にそれほど遅れているにもかかわらず、国内では高く評価され、2018年に地方政府から賞を受けた。SMEEは海外からの装置調達が困難なこともあり、それ以来大きな進歩がないという。

この技術者は「たとえ装置を作ることができたとしても、サービスやメンテナンスの方法が分からなかっただろう」と話した。

また中国の別の半導体製造装置メーカーの元上級従業員は、3D NANDフラッシュメモリのエッチング手順を習得しようとしたが、重要な要素であるチャネルホール(データの通り道)を完璧に仕上げられなかったと明かした。「何が必要か分かっていたが、装置の設計能力に限界があった。米国の競合企業はこの問題を解決済みだった」と言う。

<方向転換>

中国の半導体製造装置業界の関係者の間からは、この分野の戦略を転換し、半導体回路の高密度化で海外勢と競合するのは止めて、次世代半導体製造に焦点を当てるべきだとの声も上がっている。

中国科学院の上級研究員2人は先月、海外の既存技術の模倣ではなく、新しい技術や材料の研究開発に力を入れることを提唱する論文を発表した。

米国は昨年10月、ラム・リサーチやアプライド・マテリアルズなどの米企業による先端品製造施設への輸出を制限、中国企業は一段と孤立を深めている。日本とオランダが対中輸出規制で米国と合意すれば、中国企業にとって状況はさらに悪化するだろう。

技術者の1人は「対中制裁が始まると、全ての米企業が従った」と恨みを口にした。「以前は装置を購入すればサービスを受けることができた。今は制裁のせいで受けられなくなった」という。

(Josh Horwitz記者)