注目の週がスタートした。2022年度の最終週という意味ではない。プーチンはこの1月、ウクライナ侵攻の最高司令官にロシア軍の制服組トップ、ゲラシモフ参謀総長を起用した。その際の命令がドンバス地方を3月末までに完全制圧せよというものだった。今週はその期限にあたっている。メディアが伝える情報を総合すると、ロシア軍の猛攻に対してウクライナ軍は、撤退の危機を何度も乗り越えながら耐えているようだ。相変わらず戦況は「厳しい状況」(ゼレンスキー大統領)が続いている。それでもウクライナ軍はプーチンが命じた期限を乗り切ろうとしている。一部軍事アナリストの間には「ロシア軍の攻勢がピークを過ぎた」との見方もある。そんな中でウクライナ軍の反転攻勢を期待する向きが多いが、ゼレンスキー大統領は「さらなる武器の供与がない限り反転攻勢を仕掛けられない」と西側陣営を挑発する発言をしている。

残り一週間を切った。プーチンの命令ははっきり言って“絶望的”だろう。それを意識したのか今度は「ベラルーシに戦術核を配備する」と宣っている。実行することは間違いないだろう。だが、ゲラシモフ参謀総長に命令した責任はどうなるのだろうか。側近のひとりでもある参謀総長の首を切るか。もはやそんなこともできないだろう。せいぜいできるのは威嚇のレベルアップ。同盟国ベラルーシに対する核配備だ。でもそれもおそらく逆効果だろう。今回の戦争に中立を装っている多くの友好的な国々に疑心暗鬼を植え付けるだけだ。時事通信によると26日にプーチンは国営テレビで、「1930年代にドイツ、イタリアのファシスト政権や軍国主義・日本が形成したような枢軸を西側諸国は新たにつくり始めている」と主張した。北大西洋条約機構(NATO)とアジア太平洋地域の連携強化についての見解を述べたものだが、時代認識があまりにも古すぎる。プーチンはすでに時代の流れから完全に取り残されている。

国際刑事裁判書(ICC)が発行したプーチンの逮捕状を巡っても先週は大きな動きがあった。親ロシアのオーストリア司法当局者が、「(プーチンが同国を)訪問すれば逮捕する」と断言したのだ。さらに新ロシアでウクライナ戦争に中立的な立場を貫いている南アフリカのラマポーラ大統領報道官が、「(プーチン逮捕について)法的義務は認識している」と発言した。オーストリアも南アはICC加盟国。南アではこの8月にはBRICSの首脳会議が予定されている。プーチンは新興国やグローバルサウスでの支持を自らの政治基盤としている。仮に南アのBRICS首脳会議に出席でなければ、それ自体が政治的痛手になる。南アとしても逮捕しないことを前提に水面下で調整をしているものとみられるが、いずれにしてもプーチンの権威はこの問題で大きく傷ついた。9月にはインドでG20首脳会議がある。核で口頭威嚇するロシア、「早く武器よこせ」と反転攻勢に備えるウクライナ。“しゃもじ論争”している暇はどこにもない。