北朝鮮は、新型の固体燃料を積んだ大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」の発射実験を昨日行ったと発表した。朝鮮中央通信(KCNA)が今朝報じた。このミサイルをめぐって日本では昨日、北海道周辺でJアラートがけたたましく鳴り響き、テレビが緊急放送を開始、通勤・通学の時間帯だったこともあって一部の乗客が避難する事態となった。NHKによると防衛省が「北朝鮮が弾道ミサイルの可能性のあるものを発射」と発表したのが午前7時26分。同55分に政府はJアラートでこの情報を発信した。その1 分後、7時56分にはエムネットで「北海道周辺に落下と見られる」と発信した。この時点でテレビ局は全局がJアラート関係の実況中継に切り替わり、日本中が北朝鮮ミサイルの行方を固唾を飲んで見守るという大騒動に発展した。だがミサイルは飛んで来なかった。

何が起こったのか?有体に言えば防衛当局がミサイルの行方を見失ったのである。そして8時16分、政府は「北海道及びその周辺への落下の可能性なくなったことが確認された」と発表した。日本中に安堵感が広がる一方で、政府・防衛当局に対するある種の“疑念”が広がった。これに対して松野官房長官は午前11時過ぎ、「Jアラートの発出判断は適切だった」と一連の事態を擁護する説明を行なっている。ミサイル着弾の可能性がある限り一刻も早くその事実を国民に知らせるのは、生命・財産を守ることを最大の責務としている政府の当然の務めだろう。Jアラートの発出に問題があったとは思わない。地震の予知情報が外れても、誰も文句を言わないだろう。一連の大騒動の検証はこれから行われる。最大のポイントは、どうして防衛当局はミサイルの弾道を見失ったのか、その一点だろう。

NHKによると防衛省幹部は自民党の会合で、ミサイルを探知した後にレーダーから消失した理由について、「高い高度で飛しょうしたことが原因だった」との見方を示したという。この説明で防衛当局の責任がどれだけ回避できるのか、素人にはよくわからない。北朝鮮が日本にミサイル攻撃を仕掛ける場合、ロフテッド軌道は取らず通常の軌道で飛んでくる。だからレーダーで探知できると言いたいのかもしれない。だがそれは日本の官僚が思い描く常識に過ぎない。今回の事例を受けて北朝鮮は、日本に対するミサイル攻撃にロフテッド軌道を採用するかもしれない。そうすれば日本はミサイル防衛ができない。北朝鮮はその事実をしっかりと頭に叩き込んだ。極超音速ミサイルもレーダー網にかからない。敵基地攻撃能力の強化に取り組む日本の防衛システムは、攻撃以前にミサイルの防衛すらできないのだ。常識をこえる敵の非常識な攻撃に日本の主流派(政府・政治家・官僚・有識者・マスメディアなど)は対抗できるのか。