[ワシントン 22日 ロイター] – バイデン米大統領は22日、国賓として訪米中のインドのモディ首相とホワイトハウスで会談し、防衛や通商面での協力深化で合意した。中国の影響力に対抗する狙いがあり、両首脳は2国間関係が新時代を開いたとたたえた。

バイデン大統領は会談後、モディ首相と臨んだ共同記者会見で、米国とインドのパートナーシップは「歴史上のどの時期よりも堅固かつ緊密で、ダイナミック」と強調。経済関係も「急発展している」とし、両国の貿易が過去10年間で2倍以上に膨らんだと指摘した

モディ首相も、両国の「戦略的パートナーシップ」に「新たな章が加わった」と語った。

バイデン氏は夕食会の乾杯のあいさつで、両国は偉大な国、偉大な友人と述べた。モディ氏は「大統領は物腰が柔らかいが、いざ行動するとなれば非常に強い」と応じた。

夕食会にはアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)やグーグルのスンダル・ピチャイCEO、オープンAIのサム・アルトマンCEOら米ハイテク企業の幹部が招待客として名を連ねた。

両国は正式な同盟国ではないものの、米政府は中国を抑止するためにもインドとの関係を重視している。両首脳は中国を名指ししなかったものの、暗にけん制した。

モディ氏は米議会での演説で「威圧と対立の暗い雲が、インド太平洋に影を落としている」と述べ「地域の安定が米印のパートナーシップの中心的な懸念の1つとなった」とした。

バイデン大統領は会談に先立ちホワイトハウスで行われた歓迎式典で演説し、「世界が今世紀に直面する課題と機会は、インドと米国が連携し共に主導することを必要としている」と述べた。

式典には約7000人が出席した。

2時間以上に及んだ会談後に両首脳は共同声明も出し、東・南シナ海の緊張の高まりや不安定化を招く行動について警告。国際法と航行の自由の重要性を強調した。

モディ首相は記者会見で、事前に選ばれた米国とインド側の記者2人による質問に応じた。モディ氏は首相就任以降、会見で質問を受け付けたことがなく、異例の対応となった。

米政府は、ウクライナ侵攻後もインドがロシアと緊密な関係を維持していることに不満を示してきた。モディ氏は演説でロシアに直接言及することは避けたが、ウクライナでの衝突が「地域に多大な苦痛をもたらしている。大国を巻き込んでいるため結果は重大だ」と語った。

<一部議員がボイコット>

注目されていたインドの人権問題への懸念については、イスラム教徒やその他の少数民族の権利の改善に向けどのような措置を取るかという米記者からの質問に対し、モディ首相はインドに「差別の余地は全くない」と応じた。

バイデン大統領は会見で、民主主義的価値観についてモディ氏と率直な協議をしたと述べた。

議会のリベラル派議員の一部はインド政府のイスラム教徒の扱いに抗議するため、モディ氏の演説をボイコットした。民主党急進派のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員は21日にボイコットを呼びかけていた。

一方、マッカーシー下院議長(共和党)は、民主党のジェフリーズ下院院内総務とともに超党派の議会代表団を率いて10月にインドを訪問すると明らかにした。

<半導体などで連携>

両国は半導体、重要鉱物、宇宙協力、防衛協力などに関する合意も発表。サプライチェーン(供給網)を多様化して中国依存を低下させたり、将来的に軍事転用される可能性のある先端技術を囲い込むなどの目的がある。

世界貿易機関(WTO)での紛争を終わらせることでも合意し、インドは対米関税の一部を撤回した。

会談前、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の航空宇宙部門は、インド空軍の次期戦闘機に搭載するエンジンを製造することで、インドの国営航空機メーカー、ヒンドゥスタン・エアロノーティクスと契約に調印したと発表。バイデン、モディ両氏はGEによるインドでのエンジン製造を承認する見通し。

また、海事協定の下でインド洋で活動する米海軍の艦船が補修作業のためにインドの造船所に立ち寄ることが可能になる。インドは米国から無人航空機シーガーディアンMQ-9Bを調達する。

米半導体大手マイクロン・テクノロジーは、モディ氏の出身地である西部グジャラート州で27億ドルを投じて半導体検査・組立部門を設立する計画。米国はまた、インドの技能労働者に対して査証(ビザ)発給・更新の要件を緩和する。

さらに、インドは米国主導の有人月面探査「アルテミス計画」に参加し、2024年の国際宇宙ステーションへの合同ミッションで米航空宇宙局(NASA)と協力することにも合意した。

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▽印首相、訪米最終日はアップル幹部らと会談 中国には言及せず<ロイター日本語版>2023年6月24日3:38 午前