この週末、世界中を釘付けにした「プリゴジンの反乱」はいったい何だったのか?固唾を飲んでニュースを見守ったが、はっきりしたことは依然として藪の中だ。マスメディアや評論家は、それぞれの力量をかけてそれなりの解説をする。だが、個人的に腑に落ちる解説はほとんどなかった。親密な2人である。本当にこれは独裁者プーチンに対する怪人・プリゴジンの反乱だったのか。プリゴジンの政治的なパフォーマンスという説はないのか、あるいはプリゴジンとプーチンは水面下で通じていたのではないか。根拠のない勝手な夢想が完全に的外れともいえない気が、個人的にはひそかにしている。プリゴジンもプーチンも25日の未明(日本時間)以降、連絡がつかないという報道もある。プリゴジンと一緒にプーチンも失脚したのではないか。乱れ飛ぶ情報に信頼性がないと、夢想が妄想となって頭の中を駆け巡る。

マスメディアを通じてしか情報を入手する手段がない一般の生活者にとって、確かな情報がない状態は自由に空想できるいい機会でもある。夢想と妄想が空想を掻き立てる。後期高齢者に近づいて脳細胞が干からび、弾力性に欠けた思考能力に一定の刺激を与えてくれる。最初の刺激は23日にプリゴジンがテレグラフに投稿したロシア軍部に対する批判だ。「2月24日に起きたことは日常茶飯事にすぎない。国防省は国民と大統領を欺こうとし、ウクライナからとんでもない侵攻があり、北大西洋条約機構(NATO)全体でロシアを攻撃することを計画していると説明していた」と述べた。さらに「戦争はショイグ国防相が元帥に昇格するために必要だった。ウクライナを非武装化し、非ナチ化するためには必要ではなかった」と強調。「エリート層の利益のためにも戦争が必要だった」、まるでプリゴジンは西側の人のようだ。

まだある。「ロシアは侵攻に踏み切る前にウクライナのゼレンスキー大統領と協定を締結できたはずだ」、「戦争ではロシアで最も有能とされる部隊を含む何万人もの若い命が不必要に犠牲になった」、「われわれは自らの血を浴びている。時間は過ぎ去っていくばかりだ」とも述べている。思わずそうだ、そうだと相槌を打ちたくなる。責任はプーチンではない、ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長にある。プリゴジンはプーチンと軍部の間に楔を打ち込もうとしている。プーチンがこれを受け入れれば、軍部に責任を押し付け、ウクライナ戦争を終結させることができる。ショイグの後任はプリゴジンだ。進軍をやめたプリゴジンは一切の罪を問われない。プーチンから免責を得ている。2人は水面下に潜って環境整備を行なっている。いずれ明らかになるのはショイグとゲラシモフの解任だ。かくしてウクライナ戦争は終結する。空想戦争終結論。<注:引用はすべてロイター>