先週の5日と6日に開催されたウクライナ和平協議に関連する情報が、ポツリポツリと漏れはじめている。中でも注目されるのは中国に関する情報だ。ロイターによると「中国外務省は7日、サウジアラビア西部ジッダで開かれたウクライナ和平に関する協議について『国際的なコンセンサスの強化』に寄与したとの声明を発表した」。「国際的なコンセンサスの強化」は何を意味するのだろうか。NHKはウクライナ大統領府が同日、「国家の主権と領土保全の不可侵性を尊重することについて、各国が関与する意思を示した」との見解を発表したと報道している。「国家主権と領土の保全」が中国の言う「国際的なコンセンサスの強化」に該当するとすれば、この和平協議はウクライナ戦争に新たな展望を切り開くのではないか。期待と同時に、中国は本当にそこまで踏み込んだのか、ある種の疑念が頭をよぎる。

サウジ主催のこの会議の参加者はウクライナをはじめ中国、インド、米国、欧州諸国など40カ国以上にのぼっている。日本は外務省の審議官が参加している。だが、肝心のロシアは参加していない。中国は元駐ロシア大使の李輝ユーラシア事務特別代表を派遣した。李氏は5月、ウクライナ危機の政治解決について合意点を探るため、欧州6カ国を歴訪した経験がある。「コンセンサスの強化」が領土保全を意味するとすれば、中国はプーチンが主張するウクライナ侵攻に批判的な姿勢を示したことになる。この解釈が正しいとすれば、習近平とプーチンの間で締結された「戦略的パートナーシップ」という強固な関係はどうなるのだろうか。中国外務省の声明には「(李氏は)ウクライナ危機の政治的解決について全ての当事者と広範囲に接触し、意思疎通を図った。各方面の意見や提案に耳を傾け、国際的なコンセンサスをさらに強化した」とのみ記されている。

中国の声明はさらに「全ての当事者が李氏の出席について前向きにコメントし、和平協議を促す中国の前向きな役割を全面的に支持した」と強調する。さらに、中国が提示した12項目の和平案を基に今後も対話を強化し「相互の信頼を積み上げる」と書く。ここまでくると「やっぱりいつもの中国だ」という気がする。中華思想ではないが、あくまで中国中心の和平協議なのである。そんな中国に対して米国は、ある意味で大きな期待を寄せているようだ。ロイターは「国務省のミラー報道官は7日、中国がサウジアラビア西部ジッダで開かれたウクライナ和平に関する協議に出席したことは生産的だったという認識を示した」と指摘する。この協議がどこに行き着くのか、現時点でははっきりしない。とはいえ、ロシアが参加しない和平協議が続いていること、主権や領土保全という言葉が飛び交っていること、この二つにこれまでにない変化の兆しを感じる。