期待の女子サッカーW杯準々決勝、なでしこジャパンはスウェーデンに完敗した。得点こそ2対1の接戦に見えるが、ゲームの内容は完敗だった。敗因はゲームを支配できなかったことだ。原因はデュエル(1対1の競合い)で負けたこと。スウェーデンは攻撃的に攻めただけではない。日本の特徴であるパス回しを封じ込める作戦にうって出た。なでしこがボールを持つと2〜3人で取り囲んでボールを奪った。この作戦が日本にプレッシャーをかけ続け、得意とするパス回しがワンテンポ遅れてしまった。かくして敵にボールを奪われる回数が多くなる。こうなると自分たちのペースで試合ができない。こういう試合は見ていると胸がヒリヒリする。挙げ句の果てに胃がキリキリ痛むような感覚に襲われる。準々決勝までの4試合の、ウキウキするような「観る楽しさ」が完全に消えてしまった。FIFAランキング3位のスウェーデンになでしこは封じ込められた。

男子サッカーの日本代表MF・遠藤航(シュツットガルト所属)が、2年連続でブンデスリーガのデュエル王に輝いたことを受け、最近のサッカー中継ではデュエルという言葉が盛んに使われている。調べてみるとこの言葉は意外と古いようだ。ググってみると次のような解説があった。「ヴァヒド・ハリルホジッチがサッカー日本代表監督だった頃、盛んに論議されていたのが『デュエル』という“ボールの奪い合いで勝つ身体能力の強さ”。 局面でのバトルはその後、Jリーグのサッカー選手の必須能力として定着していった」とある。ハリルホジッチが日本代表の監督をつとめたのは2015年から2018年。ロシアで開催されるW杯の出場権を獲得しながら、戦術をめぐるチーム内の不和などを理由にW杯目前に解任された。そのハリルホジッチの戦術に日本サッカーの可能性を見た人がいた。五百蔵容(いほろい・ただし)氏だ。

「失われたハリルホジッチ・プラン。『エリア戦略』でみる隠れた一貫性」(footballista、2018.04.27掲載)の最後に次のような一節があった。「ハリルホジッチは適切なエリア戦略の選択、相手のやり方に応じた戦術の構想と実装、自チームの戦力を生かす『戦術的デュエル』の準備、それらを緊密に結びつける能力を備えた監督です。その能力は日本代表の強化戦略にも適合しており、前2大会で露となった課題を解決するに十分な期待を持てるものであると思います」。ノルウェー戦でみせたあの攻撃的な守備。MFの長谷川唯がデュエルで勝って、正確な縦パスを前線に送る。これに反応した宮澤ひなたがゴールに突き刺す。身長で劣る日本選手の速いパス回しと手数をかけない攻撃。こういうサッカーを見るのは楽しい。相手の強いデュエルをからぶらせるテクニック。ワンタッチパスで身方のデュエルに強い選手にボールを集める。素人が考えた、次のW杯までに磨いてほしい、なでしこの強化ポイントだ。