米下院のマッカーシー議長が解任された。メディアの報道によると米国で議長が解任されるのは憲政史上初めてのことだという。ウィキペディアによると米議会の創設は「1774年に、13 の植民地州の代表が集まって開いた第一回『大陸会議』を起源としている」とある。憲政史上初めてということは議会創設以来249年にしてはじめての出来事ということになる。驚くべき出来事であることは間違いない。だが、なぜだろう、それほどの驚きを感じない。おそらく共和党内部のゴタゴタに慣れっこになってしまったせいだろう。解任に賛成したのは民主党(現有議席は212)208人と共和党(同221)の8人。主義主張の全く異なるが議員たちによって、大統領継承順位2位の下院議長が解任された。これは民主主義なのだろうか?民主党は出席議員全員が賛成に回った。共和党と全面的に対峙している民主党だけに、これは理にかなっている。問題は共和党の8人だ。

議長の解任決議案を提出したのは同じ共和党の保守強硬派に属するマット・ゲーツ議員である。政府機関の閉鎖を回避するためにマッカーシー議長が提案した45日間の暫定予算に、強硬派が主張する歳出の大幅な削減策が盛り込まれなかったことを理由にしている。来年度予算の大幅削減案は民主党の全員が反対している。削減(ウクライナ支援も含まれる)せよと要求している共和党の強硬派と、削減は罷りならんと主張している民主党の出席者全員が手を組んで議長を解任した。政治的に筋の通らない解任劇だ。解任は政策論ではない。感情論を優先させた個人攻撃だ。マカーシー氏には議長選出の過程から賛否両論が渦巻いていた。そうした流れを引きずったまま、予算案をめぐって共和党の内部構想が激化。議長の解任劇は党内構想を収拾できなかった議長の手腕に対する反発といった方がいいかもしれない。いずれにしろ、議長解任で米議会は筋の通らない採決を許したことになる。西側陣営のリーダー失格だ。

ウクライナ戦争は強権国家・ロシアに対する西側陣営の防衛戦争でもある。ウクライナ支援の大義名分はいまさら語るまでもない。この戦争に負ければ地球は独裁者たちの楽園になるだろう。NHKによると提案者であるマッド氏は「トランプ氏と話し、私は正しいことをしていると自信を持った」と述べている。背後にMAGAを標榜するトランプ氏の影がチラつく。当のトランプ氏は解任劇の前にSNSに「なぜ共和党はいつも内部で争っていて、われわれの国を滅ぼしている過激な左派の民主党と闘わないのだろう」と投稿した。ならばトランプ氏に逆に聞きたい。「共和党はなぜロシアとの戦いを避けようとするのか?」。独裁国家が勝利しても「米国ファースト」や「MAGA」だけで米国民に平和は訪れるのか。バイデン氏に期待しても無理だろう。デサンティス氏はなぜここに踏み込まないのか?

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