先週の金曜日(19日)、東京地検特捜部が一連のパーティー券疑惑に関連する捜査を終了した。その途端に政界の雰囲気が激変したように見える。政治改革に向けて疑惑の源泉だった自民党が勢いを復活させ、野党の体たらくが改めて浮き彫りになってきた。今回の疑惑で問われたのは一体何だったのか?裏金づくり、派閥を利用した不正のシステム化、拭えない政治家の不正疑惑、数え上げたらキリがない。そして捜査の終結と同時に疑惑の自民党が復活。安倍派5人衆の一人、世耕氏に至っては秘書に全ての責任を押し付ける自覚の無さ。この人の政治生命は終わりだろう。八王子市の市長選挙では自公推薦の候補が僅差とはいえ当選を果たした。八王子といえば、安倍派の幹部・萩生田光一前政調会長の地元だ。疑惑の渦中でも勝利する自民党。派閥解消を言い出した岸田内閣の支持率(産経新聞調査)も5ポイントアップした。何事もなかったかのように自民党はすでに復活しはじめている。

際立つのは野党の体たらくだ。政権獲得のまたとないチャンスに拱手傍観するだけ。自民党ペースの政治改革路線に相乗りしようとしている。きのう、NHKの朝9時、各党幹事長が集まった政治討論をみた。議題はパーティー券疑惑を受けた政治改革。各党がそれぞれの改革案を出し合っていたが、肝心の野党第一党の立憲民主党・岡田幹事長は、具体的な改革の進め方について自民党の茂木幹事長に“お願い”する始末。夕方のニュースで泉代表が「自民党には政治改革を語る資格がない」と、一刀両断切り捨てていた。このくらいの勢いがないと通常国会で主導権は確保できない。その泉代表、もっと大きなテーマである政権奪還の具体論はまったく語らない。政治改革ももちろん大事だが、この局面では自民党打倒がもっとも確実な政治改革のはず。それを黙して語らず、何が野党第一党か。同氏は昨年、次の総選挙で150人の当選を目指すとぶちあげている。チャンス到来ではないか。

正直にいえば野党ばかりではない。東京地検特捜部の大上段に振りかぶった捜査は一体何だったのか、野党と同じように日本政治の闇に切り込まない体質に、改めて不信感を抱いた。結局は「同じ穴の狢」ではないか。日本には財務省(国税庁を含む)、最高検察庁、内閣情報調査室が三位一体となったダークステート(DS)が存在すると、この欄で過去に書いた。日本を実効支配しているのは政治家でも与党でもない。トライアングルとなった官僚が、巧妙に政治家を使って支配している。これが実態だ。政官癒着どころではない。官が勝手に日本の進路をきめている。党利党略ならぬ個利個略だ。絶大な権力を世に知らしむることなく勝手に使っている。この構造に日本の閉塞感の淵源が潜む。自民党はトライアングルと不即不離。26日から通常国会がはじまる。期待感はまるでない。政治を国民の手に取り戻す。これが政治改革の本筋だが、その道は果てしなく遠い。