けさ目に止まった記事はブルームバーグ(B B)が昨日配信した財政赤字に関するもの。タイトルは「米政府債務は持続不可能-100万通りのシミュレーションで結論は一つ」。中身はというと最近「米議会予算局(CBO)は最新の予測で、米連邦政府の債務が対GDP比で昨年の97%から、2034年には116%へと上昇し、第2次世界大戦時よりも高くなると警告した」。この警告が妥当かどうか、自ら検証してみたというもの。その結果、「実際の見通しは(C B Oの見通しよりも)もっと悪そうだ」と結論づけている。経済通信社であるB Bは税収や国際収支、インフレ見通しや金利など様々な条件を入れ替えながら、100万通りのシミュレーションを行った。その結果「C B Oの予測はバラ色の仮定に支えられている」とし、債務残高の対G D P比は10年後の34年に「123%まで上昇する」と結論づけている。

試算の結果が妥当かどうか、素人にはわからない。ただこの記事を見て気になったのは、仮に米国の債務残高が対G D P比でC B Oの試算である116%ではなく、B Bのシミュレーションの通り123%になったとして、それで米国の財政運営が「持続不可能」になると、どうして断言できるのだろうか。その一点である。例えば、財務省の試算によると2023年末の日本の財政赤字は対G D P比ですでに258%に達している。ちなみに同時点の先進諸国の対G D P比の赤字は米国が122%、英国が106%、ドイツが67%、フランスが111%、イタリアが140%である。日本は自慢じゃないが断トツの1位だ。日本財政の対G D P比率は米国の2倍を上回っているのである。それでも日本の財政が持続不可能だとは誰も考えていない。巨大な財政赤字の上で日本人は悠々と日々を送っている。これは一体なんなのだ。

M M T派のように財政赤字は無限に拡大してもいいと言っているわけではない。財政が持続不可能になる限界がどこにあるのか、誰もわかっていないという気がするのだ。専門家にもわからないことが、ど素人にわかるわけがない。だが、時にはど素人の直感が専門家の叡智を飛び越えてしまうこともあるのではないか。シミュレーションの限界は金利や税収、経済成長率など一定の条件を前提にして計算することだ。この前提が曲者だ。金利が1%変わっただけで、森羅万象あらゆるものが変化する。しかも条件は無限にある。これが玉突きのように変化するわけで、この変化を完璧に計算し尽くすことは現在のコンピューターの能力を超えている。シミュレーションを1億通りやっても正解は出ないだろう。財政の「持続不可能」とは何か、個人的にはそこが知りたい。

スタンダードプラン 詳細はこちら