ニュースを読みながら記事の狙いがわからなくなることが時々ある。ロイターが昨日の夕方配信した次のニュースもその一つ。タイトルは「『過度なコロナ対策』是正を、中国新華社が報道 新規感染者増加」。タイトルだけを読むと「ゼロコロナ」を柱とする中国のコロナ対策は行き過ぎ、是正すべきだと主張しているようにもとれる。仮にそうだとすればこれは、3期目に突入した習近平総書記に対する批判だ。これが本当なら大変だ。だが、新華社電を転載したロイターにそんな気配はない。一体新華社の狙いは何か。日本でもコロナの第8次感染が現実味を帯びてきているが、中国も事情は似ている。中国の新規感染者は9日現在、8824人、今年4月以降で最多を記録した。こうなると俄然注目されるのが「ゼロコロナ政策」だ。

ロイターによると中国国内では「国民に不評で、経済的損失も大きい『ゼロコロナ』政策への懐疑的な見方が広がっている」という。習総書記はいよいよゼロコロナ政策を転換するのか、そのための雰囲気づくりを新華社は担っているのではないか。根拠のない憶測が頭の中を駆け巡る。そんな思いを否定するかのように記事は続く。「中国は、感染が拡大する中でも、ゼロコロナ政策を堅持する方針を変えるつもりはないと、繰り返し表明している」と。懐疑的な見方はどうなった?思わず叫びたくなる。ゼロコロナの中、「中国では何千人もの政府関係者がコロナ抑制の失敗を理由に処罰されている」。習一強独裁の国である。地方の総書記やコロナ担当者は、感染者が増加するたびに処分を受けている。処分を避けようと独裁者への忖度が勢いを増す。その結果として「過度のコロナ対策」が蔓延する。

そこで新華社は主張する。「全ての地方は、科学的で正確な予防と制御のレベルをさらに向上させ、最小のコストで最大の予防と制御効果を達成し、経済と社会の発展への流行の影響を最小限に抑えるため努力せよ」と。ゼロコロナをぶち上げるのは独裁者。具体的に実践するのは地方政府。失敗すれば処分される。メディアは独裁者に忖度して手前勝手な論理を展開する。地方から見れば失敗を回避する方策は「過度な対策」しかないではないか。かくしていたるところでロックダウンが発生する。独裁者の意に沿ってロックダウンを実行したら、今度は後ろから独裁者に忖度するメディアに批判される。これでは地方政府の役人や担当者はたまらない。それ以上に過度な負担を強いられる人民に救いはない。これが中国の実態ということか。中国がロシア化したのか、ロシアが中国化したのか、いずれにしても国民は救われない。