統一地方選挙前半の昨日、知事選や政令指定氏の市長選挙が行われ、地方政党である大阪維新の会が躍進した。NHKによると同会は、大阪で知事と市長のダブル選挙を制したほか、奈良県知事選挙では大阪以外で初めて維新公認の知事が誕生した。さらに、初めて大阪府議会と市議会の両方で過半数を獲得したほか、41の道府県議会議員選挙で選挙前の倍以上に議席を増やした。4年に一回の統一地方選挙、目新しい争点があったわけではないが、次に予想される衆議院選選挙など国政選挙への影響が注目されそうだ。与党。自民党に関しては奈良、徳島での保守分裂が話題となった。奈良県の知事選挙では高市早苗県連会長が中心となって擁立した平木氏が、大阪維新の会が擁立した山下氏に敗北。自民党内に亀裂を残す結果となった。たかが地方選挙、されど地方選挙。日本全国に張り巡らされている自民党の政治基盤が揺らぎ始めたのかもしれない。

「身を切る改革」を旗印に掲げた大阪維新の会。創設以来いくつもの挫折を経験しながらも、着実に支持基盤を広げている。同会の基本理念は「身を切る改革」だ。地盤の大阪で、議員の定数や報酬を削減しながら教育の無償化などをいち早く実現してきた。今回の統一地方選挙は、そうした地道な努力が有権者の間に着実に浸透していることを証明しているようにみえる。NHKによると日本維新の会と大阪維新の会は、道府県議選でも「選挙前の倍以上となる124議席を獲得しました。神奈川県議会で6人が当選するなど、地盤としている関西以外でも議席を獲得した」。地方政党から全国政党への足がかりを得たことになる。国政レベルでの政策課題の一つが少子化対策。岸田総理は「異次元の対策」を6月までにまとめると宣言している。すでにたたき台も発表している。あとはそれにかかる巨額の財源をどうするかだ。財政健全を重視する岸田政権は、増税も視野に入れた財源対策を打ち出す可能性があるとみる。

これに野党である維新はどう対抗するのか。同党にとっても大きな試金石になるだろう。まさに「身を切る改革」が試される時だ。日本維新の会の綱領を見ると日本の未来社会について「地方主導による統治機構改革」を提唱している。「現代社会においては人々の生活様式の多様化が進み、地域ごとに抱える課題も細分化される中で、中央集権体制による画一的な政策が非効率な行政を生み出し、あるいは地域の実情に沿った課題解決につながらないといった問題が表面化している」。今回再選された吉村知事はコロナ発生当初、「大阪府の実情に沿った課題解決」に取り組み、大きな成果を挙げた。異次元の少子化対策にもこうした視点が必要だろう。統治機構改革という「身を切る改革」を実践して全国政党としての地盤を強化する。それができれば維新の会は次の総選挙でも躍進する可能性がありそうな気がする。