特使団は、正恩氏の特使として先月訪韓した実妹の金与正(キムヨジョン)氏が伝えた首脳会談の早期開催の真意を探り、非核化を巡る米朝対話の実現に向けて北朝鮮を説得する考え。訪朝後、特使団幹部が米国を訪れて結果を説明するほか、日中とも緊密に協議するとしている。
特使団は鄭氏や徐薫(ソフン)国家情報院長ら特使5人と、実務者5人。米韓関係に関与する鄭氏を首席とし、米国に配慮した。徐氏は、過去2度の南北首脳会談に携わった北朝鮮の専門家だ。大統領府高官によれば、徐氏は先月訪韓した北朝鮮の金英哲(キムヨンチョル)党副委員長のカウンターパートだったという。
ただ、趙明均(チョミョンギュン)統一相は2月の国会答弁で、特使派遣について非核化を巡る米朝対話の実現が必要との考えを示していた。韓国が特使団派遣を急いだ背景には、平昌(ピョンチャン)パラリンピック閉幕後に行われる米韓合同軍事演習で、緊張が高まる状況を緩和したい思惑があるとみられる。
また韓国では6月に統一地方選が実施される予定で、少数与党政権を率いる文氏は、南北関係の改善を追い風にこの地方選での与党勝利につなげたい狙いもある。野党議員の一人は特使団派遣について「早ければ地方選までの南北首脳会談開催を目指しているのではないか」と語った。
朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省報道官は3日、「我々は米国と前提条件のある対話に臨んだことはなく、今後もない」と述べ、米国が求める非核化を前提とした対話を拒んだ。同通信は、米韓合同軍事演習について「強行するなら、我々の方法で米国に対応する」とも警告した。
また、韓国大統領府によると、文氏は1日夜、トランプ米大統領との電話会談で特使派遣を伝えたが、ホワイトハウスは報道資料で特使に触れなかった。米韓関係筋は「トランプ氏は特使に反対しなかったが、懸念も持っているようだ」としている。(ソウル=牧野愛博)