アメリカのトランプ大統領は、外交方針をめぐって意見の違いがあったティラーソン国務長官を解任して、後任にCIA=中央情報局のポンペイオ長官を指名し、新しい態勢で米朝首脳会談などに臨む方針を示しました。トランプ大統領は、日本時間の13日夜、みずからのツイッターに「CIAのポンペイオ長官がわれわれの新しい国務長官になる。彼はすばらしい仕事をするだろう」と書き込み、ティラーソン国務長官を解任することを明らかにしました。
この後、トランプ大統領は、記者団に対して、ティラーソン長官への感謝の言葉を述べる一方、「意見があわない点もあった。イラン核合意については私はひどいと考えたが、ティラーソン長官は大丈夫だと感じていた」と述べ、前のオバマ政権が結んだイランの核合意など外交方針をめぐって意見の違いもあったことを認めました。
トランプ大統領とティラーソン長官との間では、北朝鮮の核・ミサイル開発の問題などでも意見の食い違いが指摘され、辞任や解任の臆測が飛び交っていました。トランプ大統領がこの時期に解任を決めた理由について、ホワイトハウスの高官は、ことし5月までに行われる見通しの米朝首脳会談と、今後の貿易交渉に向けて新しい態勢で臨むためだと説明しました。
トランプ大統領は、新しい国務長官に指名したCIAのポンペイオ長官について「世界でアメリカの立場を復活させ、同盟関係を強化し、われわれの敵に立ち向かい、朝鮮半島の非核化を求めていくというアメリカの取り組みを続けていく」とした声明を発表し、北朝鮮の核問題などへの手腕に期待を寄せています。ポンペイオ長官は、ティラーソン長官に比べて、北朝鮮やイランなどに厳しい強硬派と言われていて、議会の承認を経て就任したあと、アメリカの外交にどのような影響を及ぼすのか、注目されます。
解任を決めた理由は
この高官によりますと、ケリー大統領首席補佐官が今月9日、トランプ大統領による解任の方針を、電話でティラーソン国務長官に伝えたということです。2人は翌日の10日も電話で話し、解任の時期には触れなかったということですが、「ティラーソン国務長官は解任が近いということはわかっていたはずだ」とこの高官は話しています。
国務次官も解任
この高官は理由を明らかにしていませんがホワイトハウスは、ケリー大統領首席補佐官が今月9日にティラーソン長官に電話して、解任する方針を伝えたと説明しており、ティラーソン長官自身が解任について知っていたかどうかについて、国務省とホワイトハウスの説明が食い違っています。
高官の辞任や解任相次ぐ
また、そのポーター氏と交際していたと報じられたヒックス広報部長はロシア疑惑をめぐって議会による調査を受けた翌日に辞任が発表されました。さらに今月6日にはトランプ政権で経済政策の司令塔だった、国家経済会議のトップ、コーン委員長が辞任することが明らかになりました。また、今月はじめにはホワイトハウスで安全保障を担当するマクマスター大統領補佐官が近く交代する可能性があると一部のメディアが報じるなど、トランプ政権は政権を支える高官の去就をめぐって、日常的に臆測が飛び交う異例の状況が続いています。
与党は支持 野党は懸念も
また共和党の重鎮、マケイン上院議員も声明で「世界の秩序が急速に混乱に陥るなか、国際社会の舞台で強い立場からわが国を導くことがこれまでになく重要であり、ポンペイオ氏は国務長官として課題に対処できると確信する」として、トランプ大統領の判断を支持する姿勢を示しました。
一方、野党・民主党の下院トップ、ペロシ院内総務は解任されたティラーソン国務長官がロシアに対しトランプ大統領より厳しい姿勢を示していたことを踏まえ、「トランプ大統領の行動は政権のあらゆる職員がトランプ大統領の気まぐれとプーチン大統領への畏敬の念に翻弄されていることを表している」と非難しました。
また民主党上院トップのシューマー院内総務も「政権の不安定さがアメリカを弱体化させている」と批判したうえで、「ポンペイオ氏が心機一転してロシアとプーチン氏に対し厳しい政策をとることを望む」として、いわゆる「ロシア疑惑」の捜査が進む中、国務長官としてロシアに対し厳正な態度でのぞむよう求めました。
今回の解任の経緯
ティラーソン氏が、世界的企業のトップとして培った国際感覚、さらには、ロシアのようなアメリカと対立する国で厳しい交渉をまとめた手腕が、国務長官としてふさわしいとの意見がありました。しかし、就任以降、外交政策をめぐり、ティラーソン氏とトランプ大統領の間では、意見の違いが目立つようになりました。トランプ大統領は、パリ協定からの脱退やイランとの核合意の破棄、そして、エルサレムへのアメリカ大使館の移転などを選挙で訴えてきましたが、それらにティラーソン氏は反対し、トランプ大統領は、ティラーソン氏を既存の秩序を重んじる「エスタブリッシュメント」とみなし、いらだちを強めていったと伝えられています。
ティラーソン氏もトランプ大統領の言動に不満を募らせ、大統領のことを「ばかだ」と批判したとの報道も飛び出しました。さらに、北朝鮮の核・ミサイル開発への対応をめぐっても、トランプ大統領とティラーソン氏が一枚岩ではないことを象徴するような出来事がありました。
去年9月、ティラーソン氏は、北朝鮮の対話の意思を探るために接触していることを明らかにしましたが、直後に、トランプ大統領がツイッターで「時間のむだだ」と否定。去年12月には、ティラーソン氏が、講演で、突如、北朝鮮と前提条件なしに対話に入ることも可能だとの考えを示し、政策転換との受け止めが出て、ホワイトハウスが北朝鮮政策は不変だと火消しに追われました。
歴代政権の中でも、大統領と国務長官の溝が何度もあらわになったのは異例です。さらに、去年11月以降、ホワイトハウスがティラーソン氏の更迭を検討しているという報道が相次ぎ、政権を去るのは不可避との見方が広がっていました。ただ、ティラーソン氏は、年明けも職にとどまり、みずからもメディアのインタビューに対して辞任の考えはないと強調し、その去就をめぐって臆測が飛び交う状態はいったん下火になりました。
ティラーソン氏は、先週、トランプ大統領が米朝首脳会談の提案に応じる判断を下したときは、アフリカ歴訪に出かけていて不在でしたが、決断後、日程を一日短縮した上、会談に向けた調整を進める考えを示すなど、職務を続ける姿勢を見せていただけに、トランプ大統領の突然の発表に、衝撃が広がっています。