学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざん問題に関し、財務省の太田充・理財局長は16日の参院予算委員会で改ざんの背景を問われ、安倍晋三首相らの答弁の影響を否定しなかった。太田氏は「答弁を主にしていたのは(当時の)理財局長だが、首相や大臣(麻生太郎副総理兼財務相)も答弁がある。政府全体の答弁は気にしていた」と述べた。前任局長の佐川宣寿前国税庁長官の答弁に合わせるための改ざんだったとの財務省の従来の説明から踏み込んだ。
共産党の辰巳孝太郎氏への答弁。首相は昨年2月17日の衆院予算委で「私も妻も一切、認可や払い下げに関係ない。関係していたなら首相も議員もやめるとはっきり申し上げておく」と述べていた。辰巳氏は2月下旬からの改ざんで首相の妻昭恵氏に触れた部分が削除されたと指摘し、「整合性のために消されたのではないか」と質問していた。
太田氏は改ざんの理由について「議論の展開までにらみ、心配して書き換えていたのではないか」と語り、国会での野党の追及への懸念が背景にあったとの認識を示した。佐川氏は昨年の国会で「法令にのっとって適切に処理した」との答弁を繰り返していた。
太田氏は参院予算委で「(職員を)聴取した限りで、佐川氏は(改ざんを)知っていたと認識している」と述べた。昭恵氏や政治家の名前を記していた理由について「近畿財務局が、国会対応する本省の参考になるのではないか、と政治関係も含めて詳しく解説した」と答弁した。衆院財務金融委では「佐川氏の関与の度合いは大きかったのではないか」と指摘した。
麻生氏は参院本会議で佐川氏について「行政官としての能力は全て否定されるものでもない。国税分野における豊富な経験を生かして職務を適切に行ったと考えている」と答弁した。
この日から審議に復帰した野党は「昭恵氏につながる文書を消すための改ざんだとますますはっきりした」(辰巳氏)と批判。「一官僚が軽々にできるとは思えない。首相周辺や麻生氏周辺の圧力があったのではないか」(民進・森本真治氏)と主張し、今後も政治家の関与を追及する。
民進、共産両党は16日の参院予算委理事会で、佐川氏の証人喚問を改めて要求。与党は19日に首相が出席して開く集中審議の状況を待つ考えを示した。【野口武則、小田中大】