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起業家はアート作品の真贋見極めにブロックチェーンを活用
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3年前に抽象画「レジェンド・オブ・サトシ・ナカモト」が登場
ベンチャーキャピタリストで元スカイプ幹部のマイケル・ジャクソン氏は、長さ10フィート(約3メートル5センチ)のネオンサインに40万ドル(約4400万円)を投じた。ブロックチェーン(分散型デジタル台帳)のアドレスを示す黄色い文字と数字から成る仮想通貨がテーマの「イエローランボ」と題するアート作品だ。
アーティスト、ケビン・アボッシュ氏はこの作品について、仮想通貨が示し得る富を具体的に明示する成功のシンボルだと言う。ジャクソン氏はこの作品にどの程度の価値があるのかや将来的に価値を生むかを知らない。それでも、本物のランボルギーニが何台か買える代価を支払った。
「仮想資産は理解するのが非常に難しい。実在のランボルギーニなら、人はあこがれるだろう。富の象徴であり、それを見せつけられる。しかし、仮想通貨は誰も現物を見られない」とジャクソン氏は話した。
仮想通貨の時価総額は4300億ドルに達したが、見えざる資産の本当の価値を疑問視する向きも多い。ビットコインは昨年、14倍に値上がり。それでも米保険・投資会社バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット会長は今月開いた株主総会で、ビットコインには「おそらく殺鼠(さっそ)剤を二乗した殺傷力がある」と語った。そして今、芸術家も仮想資産の価値や所有権、基盤となるテクノロジーについて批評を展開するようになってきた。
米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が仮想通貨を「テリブル・ストア・オブ・バリュー(恐ろしい価値の保存)」と呼んだ際には、「仮想落書き」と称するアーティストはダイモン氏が「壊れつつある」ポートレート作品を制作した。作品名を同氏が放った言葉そのままとしたこのアーティストはウェブサイトで、「伝統的な銀行機関に対する人々の信用」を反映した作品だと説明した。
米ホイットニー美術館は6月、アーティストのジェニファー・マッコイ、ケビン・マッコイ両氏による3分間の映像をウェブサイトで展示し始める。ビットコインのアドレスへの手掛かりを提供するこの作品は、最初の鑑賞者50人が作品の共同所有権を主張することができる。この作品は美術館に寄付される予定で、作品の共同オーナーとなれば、自分の持ち分を転売できるという。
一方で起業家は、アート作品の真贋 (しんがん)を見極めるためブロックチェーンを活用している。アクシオム・ゼンのコミュニケーション担当ディレクター、ブライス・ブラドン氏によれば、インターネット上で際限なく再生・流通できるようになって崩壊したデジタルアート市場が、ブロックチェーンという台帳に所有権を記録することで価値を取り戻せるかもしれない。「ブロックチェーンが解決できそうなアートを巡る深刻な問題は存在する」と同氏は述べた。
アクシオム・ゼンが提供している人気ブロックチェーンゲーム「クリプトキティーズ」では、プレーヤーはデジタル子猫を育て取引する。約70万の異なる仮想子猫がいて、そのうちの何匹かは10万ドル余りで売れたと同社のアートディレクター、ギリェルメ・トワルドースキー氏は語った。このゲームは「手続きのアート」なのだという。
仮想アートの始まりは、動機付けを狙ったパズルによるところが大きい。マーガリート・ドクルセル氏は「レジェンド・オブ・サトシ・ナカモト」と題した抽象画を3年前に公開し、ビットコイン約5枚を手にする鍵の手掛かりを添えた。パズル解読に成功したと名乗り出る者が現れた今年2月までに、ビットコイン5枚の価値は約4万5470ドルに達した。この人物は「息をのむ劇的な経験だった」と話した。
このオイルパステル画に数年後、いくらの価値が付くかは分からない。
原題:Crypto Artists Unlock Value With Lambos, Kitties and Blood (1)(抜粋)