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財務長官は5月、ホワイトハウス内部の争いで保護主義者に敗れる
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経済政策の説明役、ライトハイザー氏やナバロ氏ら保護主義者の手に
米国と中国の貿易摩擦が激化する中で、ムニューシン米財務長官が異例の沈黙を守っている。同長官に近い関係者2人によれば、中国製品に対する大規模な関税賦課を決めた大統領への不満を示すため長官は意図的に無言を貫いている。通商政策を巡る対立は内部で解決する方向で目指しているという。同長官はこれまで、トランプ大統領の経済成果ならささいなものでも公に称賛してきた。
匿名で語った関係者によると、ムニューシン長官は5月、中国製品への関税導入を巡るホワイトハウス内部の勢力争いで保護主義者に敗れ、自らが取り得る最善の選択肢は沈黙することだと心に決めた。長官はより慎重なアプローチで交渉に臨むようトランプ大統領の説得を試みたが、大統領はまず500億ドル(約5兆5000億円)相当の中国製品に対する関税賦課を決め、さらに2000億ドル相当の製品に追加関税の適用を示唆するなど、事態をエスカレートさせている。
ムニューシン長官の沈黙は、政権内部の意見対立を表面化させずに、金融市場での自分の評判を落とさないようにする苦心の策だと関係者は説明した。財務長官として政権の経済政策を説明する役回りを、中国やその他の貿易相手国を激しく攻撃するライトハイザー米通商代表部(USTR)代表やナバロ米国家通商会議(NTC)委員長らに、一時的に譲った格好。ムニューシン長官は発言を避けることで大統領への影響力を維持し、いつか大統領を説得する機会を得たい考えだと関係者は述べた。
ベレンベルク・キャピタル・マーケッツのチーフエコノミスト、ミッキー・レビー氏は「ムニューシン氏は調整能力があり、中間路線を見いだせる人物だと市場ではみられているが、中国との交渉に同氏がどれだけ関わっているのかは不明だ」と指摘した。
財務省報道官は、中国による重要技術投資を抑制するための報告書を6月29日の公表までに作成する作業を含め、政府の対中政策でムニューシン長官は日々関わっていると説明したが、中国高官との交渉への関与についてはコメントを控えた。
原題:Mnuchin’s Silence Signals His Displeasure With Trump’s Trade War(抜粋)