[北京 5日 ロイター] – 中国は、米政府が6日に発動する対中制裁関税への報復として同時に適用する追加関税対象から米国の液化天然ガス(LNG)を除外した。
これは、貿易摩擦がさらに激化した場合に行使する手段として温存する狙いだ。ただ、大気汚染対策として家庭や企業のエネルギー利用を石炭からガスに切り替える取り組みを確実に進めたいという中国側の事情も浮き彫りになった。
ある国有石油・ガス会社の幹部は「(貿易)摩擦がエスカレートすれば、政府はLNGを(制裁リストに)ちゅうちょせず追加する(と予想される)」と話した。
米国の中国向けLNG輸出の規模は、年間約120億ドル相当に上る原油に比べれば今のところずっと小さい。それでもアナリストによると、中国が大気浄化対策を推進するとともに、米国からのLNG輸入が跳ね上がってもおかしくない。
モルガン・スタンレーは、昨年10億ドルだった中国の米国産LNG輸入は、向こう2─3年で最大90億ドルに増加する可能性があると試算している。
こうした輸入が懸案の中国の対米黒字を解消するには程遠いといえ、輸入拡大によって通商面で中国が新たな対米カードを得られる形になる。
もっとも一部業界筋は、中国が米国産LNGに追加関税を課した場合、代わりの調達先が限られることから自分たちも悪影響を被ると警告する。中国商務省系シンクタンクの研究員は「われわれが米国産LNGに関税を課すと、支払わなければならない機会費用がずっと膨らんでしまう。大豆なら中国は別の国からの輸入に転換するのがずっと簡単で、関税を課せば米国に与える痛手はより大きくなるが、エネルギー製品への関税は米中ともに傷を負う」と説明した。
中国国内の天然ガス需要は今年1─5月に17.6%増加し、政府が想定する年7─8%増を大きく上回る伸びとなっている。アナリストの1人は「中国のガス生産が限定されている以上、われわれがエネルギー消費に占めるガスの割合を10%に高める目標を達成するには、輸入拡大が不可欠だ」と指摘し、中国のエネルギー安全保障の観点では米国のLNGは必要になると付け加えた。