7月17日、日本と欧州連合(EU)は、首相官邸で経済連携協定(EPA)に署名した。写真中央は安倍首相、左はトゥスクEU大統領、右はユンケル欧州委員長。代表撮影(2018年 ロイター)
日本政府と欧州連合(EU)は17日、首相官邸で経済連携協定(EPA)に署名した。人口6億人、世界の国内総生産(GDP)3割を占める巨大市場が誕生する。安倍晋三首相は会見で「保護主義が広がる中、日本とEUで自由貿易の旗手として世界をリードしたい」と強調。米国が保護主義に転じる中で、日欧が自由貿易体制を死守する姿勢を示した。
首相は、日欧EPAを「国際社会の平和と繁栄をリードする基盤」と評価。「日本のGDPを約5兆円、雇用を29万人創出する」、「欧州の優れたかばんや、ワイン、チーズなどを気軽に楽しめるようになる」と強調した。
EPA発効に伴う懸念に対しては「政府としてはしっかり向き合い対応していく」と述べ、環太平洋連携協定(TPP)の対応策を援用するとの方針をあらためて示した。
安倍首相によると、EU側との会合では、質の高いインフラ輸出でも連携する方針を確認。北朝鮮情勢についても意見交換し「有意義な議論を行い、拉致問題解決で北朝鮮と直接向き合う決意を伝え、理解を得られた」という。
野上浩太郎官房副長官によると、安倍首相は会合で「英国のEU離脱の行方に懸念をもって注視している」、「強硬離脱となると英国に進出している日本企業に悪影響があるなど」と発言し、EU側に対して離脱交渉についての情報提供を求めたという。
首相はまた、東日本大震災を踏まえたEU側の日本産農産物の輸入規制について撤廃するよう要請したという。
共同声明によると、日本とEUはハイレベル産業・貿易・経済対話を設立し、年内に初会合開催を目指す。
日欧EPAは昨年7月に大筋合意し12月に妥結していた。日本からEUへの乗用車は段階的に関税を撤廃する。EUから日本への化学工業製品や繊維製品などの関税は即時撤廃、皮革・履物の関税は段階的に撤廃する。農林水産品ではコメは対象から除外した。
署名式は当初、安倍首相がブリュッセルを訪れ行う予定だったが、西日本豪雨を受け首相が外遊を取りやめたため、欧州側が来日する運びとなった。
「真のリスクは政治的不確実性」とトゥスク大統領
自由貿易には欧州域内にもそれぞれに異論があり、保護主義台頭の温床となっている。
企業関係者のEPAへの不安について問われたトゥスク大統領は「真のリスクを教えよう。政治的不確実性や激しい言葉、予測不可能性や無責任こそがリスクだ。貿易協定がリスクではない」と述べ、トランプ大統領が進める保護主義政策をけん制した。
(竹本能文)