判決後、記者会見する元朝日新聞記者の植村隆氏=9日午後、札幌市(杉浦美香撮影)

 元朝日新聞記者で慰安婦報道に関わった植村隆氏が、記事を「捏造」と書かれ名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストの櫻井よしこ氏と原稿を掲載した出版社3社に損害賠償や謝罪広告掲載を求めた訴訟の判決が9日、札幌地裁であった。岡山忠広裁判長は「櫻井氏が、植村氏が事実と異なる記事を執筆したと信じたのには相当な理由がある」として請求を棄却した。植村氏は控訴の方針。

岡山裁判長は、櫻井氏の原稿には「社会的評価を低下させる内容がある」と指摘した。ただ、韓国での過去の新聞報道や論文など、櫻井氏が取材過程で参考にした資料は一定の信用性があるもので、植村氏の記事の公正さに疑問を持ったことには相当な理由があったと判断。原稿に公益性が認められることからも、請求を退けた。

 櫻井氏は「裁判所の判断は証拠に基づく当然適切なものだ」とコメント。植村氏は判決後に会見し、「正義が法廷で実現されていない」と話した。