[ブリュッセル 14日 ロイター] – 欧州連合(EU)と英国が一致した離脱合意草案では、移行期間終了後も新たな貿易合意が得られない場合に、アイルランド国境の管理厳格化回避に向けた必要な方策について2020年7月に決める計画だという。EU関係筋が明らかにした。
EU外交筋の3人によると、英国は移行期間終了までに2つの選択肢の中から選ぶことになる。移行期間を20年12月から21年末ごろまで延長することが1つ。もう1つは、英国全域を網羅する一方で、英領北アイルランドに関してはEU規則や生産基準により近づける「必要最低限の」関税措置の導入だ。
EU関係筋は、世界貿易機関(WTO)規則の下、北アイルランドと残りの英本土は同じ関税区域にとどまると強調する。メイ政権を支える北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)の懸念を和らげる狙いがある。
同筋によれば、関税の取り決めは英国に対し国の支援や競争、環境、労働基準に関するEU規則に適合するよう求め、「公平な条件」を確保する条項を盛る。与党・保守党内の強硬離脱派にとって受け入れがたい内容とみられる。
こうした措置はEUにとって必要不可欠だ。措置がなければ、関税や枠の制約、同一基準の順守義務がないまま、英国が単一市場への開かれたアクセスを得る恐れがあるとEUは懸念する。同筋によると、こうした事態の回避に向けフランスが先導して措置を求めている。
移行期間終了までにEUと将来の貿易関係を巡る合意に至らなければ、アイルランド国境の厳格管理を避ける緊急措置として北アイルランドはEUの関税同盟にとどまると同筋は話す。
英国が関税の取り決めから離脱する方策はまとまっておらず、さらに協議が必要という。EU側は、英国と共通の仲裁制度(共同委員会)で承認し、両者が同意できなければ欧州司法裁判所(ECJ)の助言を仰ぐことになる。
一方、英国は単独で関税の取り決めから離脱できるようにしたい考えだ。
同筋によると、漁業問題も懸案となっている。EU側は現行の漁業区域相互アクセスを維持する意向で、フランスやベルギー、オランダ、デンマークなどが英水域へのアクセス確保を求めている。これに対し、英国は完全な漁業管理権を望んでいる。
ただ、漁業問題は英EU離脱合意草案で「必要最小限の」関税取り決めの枠外とし、20年7月までの打開を目指している。