フランス自動車大手ルノーと日産自動車、三菱自動車の会長を兼務するカルロス・ゴーン容疑者の逮捕を契機に、3社連合内で主導権争いが本格化し始めた。ルノーの大株主である仏政府は同社と日産の経営統合を望んでいるとされるが、稼ぎ頭の日産は独立性を堅持したい意向。思惑はすれ違い、不正発覚と逮捕は日産側が仕掛けた事実上の「クーデター」ではないかとの見方まで出ている。
ルノーは日産に43.4%、日産はルノーに15%を相互出資し、日産は三菱自株式の34%を保有。仏政府はルノーに15%出資する筆頭株主だ。仏政府は自国の雇用維持や産業振興に向け、ルノーを介して日産への影響力を高めたい考え。
2014年、仏政府は株式を2年以上保有する株主の議決権を2倍にする「フロランジュ法」を制定。ルノーを通じて日産への経営関与を強める構えを見せ、18年6月のルノー株主総会で最高経営責任者(CEO)再任を認める条件としてゴーン容疑者にルノー・日産統合を求めたとされる。
日産はこうした動きに警戒感を強めていた。資本提携当時はルノーが日産を助けたが、今や立場は逆転。ルノーの収益は日産頼みだ。17年の販売台数はルノーが376万台、日産が581万台で、技術力でもルノーを圧倒しているとの自負がある。日産の持つルノー株には議決権がなく、「不平等条約」への不満がくすぶる。
仏メディアによれば、ルノー経営陣内には、今回の逮捕を「日本側の『クーデター』」(有力紙ルモンド電子版)と受け止める声があるという。日産幹部は3社連合の資本構成について「今は極端な形だ。ウィンウィン(互恵)関係でないと意味がない」と指摘。大手行首脳も「日産の技術が3社連合の中核になっていることを踏まえ、(関係を)見直すいい機会」と話す。
日本の会社法では、日産のルノーへの出資比率が10%上昇すれば、ルノーの日産に対する議決権がなくなる。連合内のパワーバランス次第では、日産によるルノー株買い増しが選択肢として浮上する可能性もある。