[ワシントン 18日 ロイター] – 米商務省が18日発表した11月の住宅着工件数(季節調整済み)は年率換算で前月比3.2%増の125万6000戸と、3カ月ぶりにプラスに転じた。集合住宅が急増し、全体水準を押し上げた。ただ一戸建て住宅は1年半ぶりの低水準に低迷し、住宅市場の弱まりが深刻化していることを示唆した。より広範な経済に波及する可能性もある。市場予想は122万5000戸だった。
10月の数字は当初発表の122万8000戸から121万7000戸へ下方改定された。
11月は、一戸建ての完成件数が3カ月連続で減少し、戸数ベースで1年超ぶりの低水準をつけた。住宅市場の弱含みを強調する内容だ。
不動産情報サイト、ジローのシニアエコノミスト、アーロン・テラザス氏は「住宅建設は2018年に休止状態となった」と述べる。「建設業界の動向が、より広範な経済への影響の前兆ではないかとの見方が既に出ている」とした。
着工件数の先行指標となる建設許可の件数は11月に前月比5.0%増の132万8000戸となった。月々の変動が大きい集合住宅が急増した。
住宅市場は、用地・労働力不足による供給の逼迫や、住宅ローン金利の上昇が抑制要因となっている。住宅価格の上昇はペースを落としてきたものの、依然として賃金の伸びのペースは上回っている。初めての住宅購入者の一部が手を出せない状況だ。
住宅市場の弱さが続いていることは、今後経済全体が鈍化することを示唆しているかもしれない。住宅投資は第1・四半期から第3・四半期まで縮小した。縮小期間は2009年半ば以来の長さだ。
住宅投資は第4・四半期も縮小したとみられる。市場がこれまでよりも高い住宅ローン金利に慣れるまでの期間、19年上半期までは住宅投資の弱含みは続くとエコノミストらはみている。
連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、30年固定住宅ローン金利は今年に入り60ベーシスポイント(bp)超上昇し、現在は平均4.63%となっている。米連邦準備理事会(FRB)は19日に今年4回目となる利上げを決めるとみられ、金利は高止まりするだろう。
ただ、MUFG(ニューヨーク)の首席エコノミスト、クリス・ラプキー氏は「住宅ローン金利はフェデラルファンド(FF)金利誘導目標が3.0%になるとの見通しを織り込んだ水準となっているため、FRBがあと数回の利上げを行ったとしても住宅市場はそれほど大きな影響は受けない」と指摘。「FRBが緩やかな利上げの軌道から外れれば、市場に対し経済見通しを懸念しているとのメッセージを送るリスクがあるため、FRBがこうした軌道から外れないことが重要となる」と述べた。
住宅着工件数の内訳は、市場で最も大きなシェアを占める一戸建て住宅が前月比4.6%減の82万4000戸と、17年5月以来の低水準となった。3カ月連続のマイナスだった。
一戸建て住宅の地域別は最大市場の南部が6.8%増。一方で北東部は9.5%、西部は24.4%、中西部は3.2%それぞれ減少した。西部が大きく減少したのはカリフォルニア州の山火事の影響と見られている。
建設許可件数の内訳は、一戸建て住宅が0.1%増の84万8000戸だった。一戸建て住宅の着工件数を上回ったことから、向こう数カ月の間に住宅建設がいくぶん加速する可能性がある。
集合住宅の着工件数は22.4%増の43万2000戸だった。集合住宅の建設許可件数は14.8%増の48万戸だった。
ネーションワイド(オハイオ州)の首席エコノミスト、デビッド・バーソン氏は「家主自身が居住する住宅の需要が回復するまで、一戸建て住宅の着工件数の反転は難しい」としている。
この日の統計は、住宅供給が逼迫した状態が続くことを示唆する。一戸建て住宅の完成件数は5.4%減の77万2000戸と、17年8月以来の低水準となった。
建設中の住宅は0.7%増の114万8000戸だった。ただ集合住宅が半分以上を占めた。