[ロンドン 15日 ロイター] – 英下院は15日、メイ首相の欧州連合(EU)離脱協定案の採決を行い、賛成202票、反対432票の歴史的大差で否決した。英政局の混乱は深まり、EUからの無秩序な離脱あるいは2016年の国民投票による離脱決定の撤回につながる可能性がある。 

野党・労働党のコービン党首は、メイ政権に対する内閣不信任投票を要求。16日1900GMT(日本時間17日午前4時)に採決が行われる。 

メイ氏は、議会が立場を示し、政府は耳を傾けたとの認識を示した。投票後、議会に「下院がこの協定案を支持しなかったことは明白だが、いったい何を支持するのかが今夜の採決で全く分からなかった」と指摘。「議会が実施を決めた国民投票での英国民の決定をどのように履行するつもりなのか、あるいはそもそも履行する考えがあるのかが全く分からなかった」と述べた。 

「この政権が下院の信任を引き続き得ているのかを確かめる必要がある」と語るとともに、21日までに今後の方針について声明を出すとした。 

メイ氏率いる与党・保守党からはEU離脱派と残留派合わせて100人以上が造反し、反対票を投じた。230票差での政府案の否決はこれまでの記録である1924年の166票差を上回った。 

首相報道官は記者団に、メイ氏の協定案が引き続き、EUとの合意の基礎となっていくとの見方を示したが、保守党の強硬離脱派の旗頭であるボリス・ジョンソン氏は「合意案は死んだ」と述べ、EUからより良い条件を引き出すため再交渉するようメイ氏に呼び掛けた。 

一方、閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は、協定案に反対の立場を示していたが、不信任投票では引き続きメイ氏を支持すると表明。保守党の強硬離脱派議員もメイ氏を支持する考えを示した。 

EUは、離脱協定案が引き続きベストの内容で、秩序立った離脱を確実に進める唯一の道と指摘した。 

EUのユンケル欧州委員長は英議会での否決を受けて「無秩序な英離脱のリスクが高まった」と指摘し、合意なき英EU離脱(ブレグジット)に対する備えを強化する考えを示した。 

英労働党の報道官は、3月29日の離脱日の延期をEUに要請することを余儀なくされる可能性が高まったと述べた。 

これに対し、EUのトゥスク大統領はツイッターへの投稿で離脱決定の撤回を検討する必要があるとの認識を示唆。「合意が不可能で、合意なき離脱を誰も望んでいない状況であるなら、唯一の前向きな解決策が何であるかを言う勇気があるのは誰だろうか」とつぶやいた。 

英ポンドGBP=は議会の離脱案否決後に対米ドルで1セント強値を上げた。大差での否決を受けて議員らが新たな選択肢の模索を強いられるとの一部の見方を反映した。 

UBSウエルスマネジメントは顧客に対し「英資産は政治的不安定の影響を受けやすい状況が続く見通しで、明確な結論が出るまでは脆弱な状況が収まることはない」との見方を示した。