衆院予算委の休憩中、言葉を交わす(右から)安倍晋三首相、麻生太郎財務相、茂木敏充経済再生担当相=2019年2月4日午後0時59分、岩下毅撮影
政府の統計不正問題が発覚してから初めてとなる衆院予算委員会の審議が4日、始まった。厚生労働省の不正を検証するうえでカギを握る局長級の政策統括官を更迭された職員について、与党は後任がいることを理由に参考人招致を拒否。安倍晋三首相も招致の是非については「お答えのしようがない」とかわした。国会審議における事実解明に後ろ向きな政権の姿勢が鮮明になった。
焦点となったのは、厚労省の大西康之・前政策統括官の招致。不正発覚の端緒となった「毎月勤労統計」で不正な抽出調査が行われた原因を調べる責任者であり、「賃金構造基本統計」では計画と異なる郵送調査をしていたことを知りながら根本匠厚労相に報告しなかった職員でもある。衆参厚労委員会が1月24日に行った閉会中審査では答弁していたが、今月1日付で大臣官房付に異動となった。
野党は、大西氏が問題の経緯や背景に最も詳しいとみて、4日の予算委開会前の理事会で招致を要求。しかし、与党は「現統括官から答弁させる」と拒否し、この日の招致は実現しなかった。立憲民主党の長妻昭元厚労相は予算委の質問で、政権の姿勢について「政府が実態解明をブロックしている」と批判。審議を中断して招致の是非を判断するよう迫ったが、安倍首相は「参考人のやりとりは初めて知った」などとかわすにとどまった。
立憲の大串博志氏は根本厚労相から大西氏に国会への出席を指示するよう求めたが、根本氏は「信頼回復に向けて全力を挙げて取り組む中で、報告漏れがあった。この職務を担うことは適当でないと考えた」と更迭理由を説明する中で要求を拒んだ。
事実解明が進まない中、政権は今年度第2次補正予算案の成立を急ごうとしている。野党の同意がないまま、衆院予算委は野田聖子委員長、衆院議院運営委員会は高市早苗委員長の職権で、それぞれ5日に委員会と本会議を開いて採決する日程を決めた。与党は同日中に衆院を通過させる方針。参院予算委は6、7日に開催する日程を決めた。(別宮潤一)
雇用保険の追加給付は11月から
厚生労働省は4日、「毎月勤労統計」の不正調査の影響で、雇用保険や労災保険などで過少給付となったのべ2015万人への追加給付のスケジュールを公表した。1942万人と最も多い雇用保険で、受給が終わっている人には11月から始めるとした。昨年12月の問題発覚から給付までほぼ1年かかることになる。
受給済みの対象者は厚労省が4~10月(労災保険の休業補償給付は一部11月)に特定し、把握している住所に郵送で通知する。同封の用紙に振込口座番号を記して返送してもらった後、振り込みを始める。最も早く給付が始まるのは船員保険の6月で、労災保険の休業補償給付が9月ごろ、労災年金が10月ごろからとしている。
ただ、のべ1千万人以上の住所が分かっていない。住民基本台帳データを活用して探すが、引っ越しをした人や結婚で姓が変わった人などは特定が難しいとし、厚労省は相談ダイヤルへの連絡を呼びかけている。
受給中の約100万人については、3~6月に適正な額に計算し直した額に切り替える。給付済みの額の追加給付の手続きは原則不要で、通知の送付後、追加額が口座に振り込まれる。
厚労省は、04~17年に東京都の大規模事業所の調査で勝手に抽出調査を実施。このため比較的賃金が高い事業所数が減り、本来より低い賃金の結果が出たため、これをもとに給付水準が決まる雇用保険などで本来より少なく給付される人が生じた。