トランプ大統領は民主、共和両党がまとめた予算案に署名する一方で、国家非常事態を宣言してメキシコとの国境の壁建設予算を確保するようだ。大統領選挙の公約実現を目指すトランプ大統領の執念のいかに凄まじいことか、この大統領が従来の大統領に比べていかに異能か、改めて実感した。その一方でアマゾンが目指していたニューヨークでの第二本社建設問題は、地元の激しい反対にあってとうとう断念した。一見無関係に見える2つの問題、今朝のニュースを読みながら意外なところで関連していることを知る。米国経済は表面的に順調に回復軌道を辿っているように見える。だが、よくよく見るとあちらこちらで国家としてのほころびが露呈している。

メキシコの壁問題は今更付け加える事もなし。民主、共和両党の間で政党の存続を左右する大問題に発展してしまったこと、最大の問題はそこにあるように見える。政府機関の閉鎖まで道連れにして二大政党が己の主張に固執した。これでは政治が機能しなくなる。そんなことを二大政党が延々と続けている。政治の真髄はいかに“妥協”するかだろう。妥協を忘れた政党に国民の未来を託せるのだろうか。その一方で、アマゾンが計画していたニューヨーク市での第二本社建設は、地元の反対で撤回を余儀なくされた。理由はいろいろあるようだが、最大で4万人の雇用を創出する可能性がある一方で、「家賃上昇で古くからの住民が追い出されるとの不安や、既に疲弊が激しい地下鉄システムは大量の労働者流入で一層苦しい状態に追い込まれるとの懸念が強まった」(ブルーンバーグ)という。

ニューヨークの地下鉄はいまだにあの古びた地下鉄なのだろうか。薄暗い地下、老朽化した車両や設備をみてなんとなく不安な気持ちになった。4万人の雇用が増えれば、この地下鉄の利用者も急増するだろう。ニューヨーク市民が反対する気持ちが少し理解できたような気がする。メキシコの壁建設に向ける資金があれば、ニューヨークの地下鉄の近代化に取り組む方が優先順位として高いのではないか、人の国のことながらお節介を焼きたくなる。流入する移民、難民問題に直面し、国境に壁を作りたくなる気持ちもわからないわけではない。だが、長い目で見れば難民を排出している南米の貧しい国々への経済支援や、地下鉄の改修に力を入れた方が経済的コストは安くなるだろう。敵対し対立し非常事態を宣言するというやり方からは、希望の芽は生まれないような気がするのだが・・・。