アメリカのいわゆる「ロシア疑惑」をめぐりモラー特別検察官による捜査が終結し、バー司法長官に捜査結果をまとめた報告書が提出されました。トランプ大統領は、疑惑を強く否定していて、報告署の内容が注目されます。
2016年のアメリカの大統領選挙にロシアが干渉したとされる「ロシア疑惑」をめぐっては、モラー特別検察官がおととし5月からトランプ陣営とロシアとの共謀がなかったかどうかや、当初、捜査を指揮していたFBI=連邦捜査局のコミー長官の解任などが司法妨害にあたるかどうか捜査を進めていました。
アメリカの司法省は22日、声明を発表し、モラー特別検察官による捜査が終結し、バー司法長官に捜査結果をまとめた報告書が提出されたと明らかにしました。報告書は機密文書として提出されていて、内容は明らかにされていません。
バー司法長官は、先月捜査報告書の扱いについて「法と規則で許される範囲で公表する」と述べていて、可能な範囲で公表するとしています。これに対し、野党・民主党は「バー長官は完全に公表を約束しておらず、疑惑の隠蔽につながるおそれもある」と反発していました。
ロシア疑惑をめぐる一連の捜査では、これまでにトランプ陣営の元幹部やロシアの情報機関の関係者など30以上の個人や団体が起訴されています。トランプ大統領は「共謀も司法妨害もない」などとして疑惑を強く否定していますが、報告書の内容によっては野党・民主党からトランプ大統領の弾劾を求める声が強まるだけに、その内容が大きな焦点となります。
サンダース報道官「次のステップは司法長官次第」
これについて、ホワイトハウスのサンダース報道官はツイッターに「ホワイトハウスは、モラー特別検察官による報告書を受け取っていないし、説明も受けていない。次のステップはバー司法長官次第だ」と書き込み、捜査報告書の公表をめぐる司法長官の決定を見守る立場を示しました。
バー司法長官終結通知の書簡
アメリカのバー司法長官は22日、モラー特別検察官によるロシア疑惑の捜査の終結を通知する書簡を議会上院のグラム司法委員長や下院のナドラー司法委員長らに送りました。
書簡では、「モラー特別検察官が2016年の大統領選挙へのロシアの介入に関する捜査を終結したことを通知する」としています。そのうえで、モラー特別検察官から非公表の捜査報告書を受け取り、今後、内容を精査したうえで早ければ、この週末にも関係者を訴追すべきかどうかの判断をめぐる報告書の結論を伝える考えを示しています。さらに、バー司法長官は、報告書について「できるかぎり透明性を確保したい」として、関係する法律と規則の許す範囲内で、議会と国民に対して内容を公表したいとしています。
野党民主党「すべて公表を」
ロシア疑惑をめぐる捜査報告書が司法長官に提出されたことを受けて野党・民主党は上院トップのシューマー院内総務とペロシ下院議長が共同で声明を出しました。
この中で「バー司法長官が報告書をすべて公表し、議会に対して、その基礎となる資料や捜査の結果を明らかにすることが不可欠だ」と述べました。そのうえで「ホワイトハウスは捜査結果や証拠をどの範囲まで公表するか干渉すべきではない。アメリカ国民は真実を知る権利がある。大切なのは透明性だ」と指摘し、捜査結果の公開をめぐる判断で、トランプ大統領らが関わることがないようくぎを刺しました。
共和党速やかに通知を
一方、与党・共和党の上院トップのマコネル院内総務は声明を出し、「共和党は、ロシアがアメリカの重大な脅威になっていると考えてきた。モラー特別検察官の報告書によって、共和党はこれまで以上にアメリカの民主主義を守ることができるだろう」として、ロシアによる選挙干渉こそが問題だと強調しました。
そのうえで「司法長官は、情報をできるだけ開示したいと話していたので、可能なかぎり早く、多くの情報を明らかにしてもらいたい」として、バー司法長官に対して、報告書の内容を速やかに通知するよう求めています。
- 投稿タグ
- トランプ大統領