英政府は欧州連合(EU)各国で23日~26日に行われる欧州議会選挙に参加する方針を正式に発表した。EU離脱に向けた議会との調整が間に合わず、加盟国としての義務を果たす。投票は23日。欧州議会は定員が751。時事通信によると、「世論調査では中道右派、左派の二大会派が初めて合計での過半数を失う見通しの一方、EU懐疑派は計3分の1を超える勢いで、EUの先行き不透明感が強まっている」という。英国にとどまらずEU全域で懐疑派が勢力を伸ばしている。この事実にもっと目を向ける必要がある。緊縮財政による景気の低迷、失業率の増加、大量に発生する移民・難民の受け入れ。こうした現実が懐疑派を勢いづかせている。

4月下旬に実施されたスペインの総選挙。新興極右政党ボックスが24議席を得て国政に初進出した。「反移民・難民などを背景にした欧州でのEU懐疑派の隆盛を改めて印象付けた格好で、イタリアの極右政党『同盟』を率いるサルビーニ副首相は『ボックスが欧州での仲間となることを望む』と勢力結集を呼び掛けた」(時事通信)。複数の世論調査を集約・分析するウェブサイト「ポール・オブ・ポールズ」の予想(6日時点)によると、二大会派の中道右派「欧州人民党(EPP)」は171議席(現217)、中道左派「欧州社会・進歩連盟(S&D)」は148(同186)と劣勢の一方、同盟やフランスの「国民連合」などの極右グループは69(同37)と躍進する情勢だという。

欧州議会の大勢がひっくり返ることはないとしても、極右勢力が躍進することは間違いないようだ。こうなると、簡単に極右と呼ぶべきかどうか疑わしくなる。極右という言葉には大勢に影響がない右翼過激派の意味が込められていると思うが、イタリアではその極右・同盟を率いるサルビーニ氏が副首相に就任、政権のキーパーソンになっている。現在の主流派によって推進されてきたEU統合という理想は、景気の低迷、移民・難民の流入という現実的な課題の前で風前の灯火になりつつある。もっと有り体に言えば主流派が推進した理想によって、有権者の平穏な生活が脅かされているのである。政治は恐ろしいものだ。理想を追求した結果、国民の世論は分断される。そして理想とは真逆の主義・主張が勢いを増す。各国の主流派が勢いを失う中で国際的に世論の分裂が始まっている。