[ワシントン/北京 8日 ロイター] – 複数の米政府関係筋と民間の関係筋によると、中国政府は、米中貿易交渉の合意文書案の全7章に修正を加えて、米国側に提示した。合意文書案は150ページ近くに及ぶが、中国政府が加えた修正は、これまでの交渉を白紙に戻すような内容だったという。関係筋によると、中国政府は、知的財産・企業秘密の保護、技術の強制移転、競争政策、金融サービス市場へのアクセス、為替操作の分野で、米国が強い不満を示していた問題を解決するために法律を改正するとの約束を撤回した。
修正後の文書がワシントに届いたのは今月3日の夜。その後5日にトランプ米大統領が対中関税の引き上げをツイッターで表明した。
ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、中国側が過去に改革の約束を守らなかったため、中国に合意事項を順守させるには法改正が不可欠との立場を示している。
協議に詳しいワシントンの関係筋は「(中国側は)通商合意の核となる構造の土台を壊してしまった」と述べた。
ホワイトハウス、USTR、米財務省、中国商務省のコメントはとれていない。
関係筋によると、中国の劉鶴副首相は先週、ライトハイザー代表とムニューシン財務長官に対し、中国が行政上・規制上の変更を通じて約束を果たすと信頼してほしいと伝えたが、ライトハイザー、ムニューシンの両氏は、副首相の案を拒否したという。
協議について説明を受けたある民間の関係筋は「中国側に欲が出てきたため」前回の交渉が前進しなかったと指摘。「中国は米国の現政権について計算ミスをしているようだ」と述べた。
<単なる交渉戦術でない>
市場では、トランプ氏の関税引き上げ表明について、交渉戦術ではないかとの見方も浮上しているが、関係筋によると、中国による合意文書案の修正は深刻なもので、トランプ氏の反応は単なる交渉戦術ではないという。
通商協議に詳しい中国の当局者は、中国では法改正に長い時間がかかると指摘。米政府は中国側の姿勢が後退したと主張しているが、交渉が進むにつれ、米国の要求は「厳しい」ものになり、合意への道筋が「狭まって」いったとコメントしている。
劉鶴副首相は通商協議のため9─10日に訪米する。一部の関係筋は、貿易戦争のエスカレートを回避するには、副首相が合意文書案の修正を撤回し、法改正に同意する必要があると指摘。
中国の産業補助金縮小や米国の遺伝子組み換え作物の承認手続き合理化など、米国側の他の要求についても、歩み寄りが必要になるとの見方を示している。