FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)がルノーに対して対等合併を提案してきた。ゴーン問題以降、ルノーと微妙な関係にある日産にとっては新たな頭痛の種だろう。メディアの情報を総合するとFCAとルノーの話し合いは水面下でかなり進んでいるようだ。日産、三菱は完全に蚊帳の外である。日経新聞によると2018年の世界販売台数はFCAが484万台で8位、ルノーが388万台で9位。両社を合計すると872万台となりGMの838万台を上回って4位になる。これにルノーと連合を組む日産と三菱自を加えると合計1559万台、現在首位の独VW1083万台を大幅に上回って世界1位になる。メディアには取らぬ狸の皮算用だけが並んでいる。

FCAの本拠地はイタリア。極右政党「同盟」の党首で副首相を務めるサルビーニ氏は「フィアット・クライスラーの拡大はイタリアにとって良いニュースだ」(ロイター)と歓迎しているが、問題はマクロン・フランス政府との関係だ。ロイターによると同盟の議員は「ルノーに出資するフランス政府と対等な立場に立つため、イタリア政府が統合新会社への出資を求める可能性がある」と発言している。フランスもイタリアも何事につけ政治家が介入するお国柄だ。EUのあり方を巡って政治家同士が口角泡を飛ばして喧々諤々と議論が続く。対する日本勢。技術的な面での主導権はとれても、経営をめぐる権力争いなると“蚊帳の外”だろう。フィアットもルノーも決して勝ち組ではない。日産、三菱を取り込んで世界制覇を狙っている。

日産はどう対応するのだろう。NHKによると日産の西川廣人社長は27日夜、「FCAによるルノーとの経営統合の提案に日産は関与していない。それを前提にすれば、全体としてはポジティブな話だと思う。日産の権利や契約の部分がどう影響するか見ていかなくてはいけない」と述べている。26日に終了した欧州議会選挙、イタリアでは「同盟」が大勝。対するフランス。マクロン大統領率いる「共和国前進」は、極右政党「国民連合」に敗れている。EUはイギリスの離脱問題をはじめ緊縮財政の是非を巡って政治の季節を迎えている。政経一体のイタリアとフランス。日本は政経分離の建前を貫いている。つながる車に自動運転自動車、世界中で自動車業界の合従連衡が蠢いている。政治の季節に日産、三菱は太刀打ちできるのだろうか。