- 東京・本郷では「東大生」ら250人が活動、2号ファンド組成も計画
- 1号ファンドは60億円規模、サッカーの本田圭佑選手も投資
ソフトバンクグループの人工知能(AI)に特化したベンチャーキャピタルは、より多くの起業家の卵を育成するため、年内に事業拠点を2カ所増やす方針だ。投資拡大へ第2号ファンドの組成も計画している。
ディープコアの仁木勝雅社長兼最高経営責任者(CEO)が明らかにした。新拠点の詳細については言及を避けたが、国内スタートアップの数は欧米に比べ少なく、米国のグーグルやアップルなど「GAFAのような会社は日本ではここ十数年出てきていない」と指摘。技術者が起業しやすい環境をつくることで、「GAFAになり得る企業が日本から生まれてほしい」と語った。
ソフトバンクGは2018年2月、ディープコアを通じてインキュベーション(起業支援)事業を開始。8月には東京大学近くの文京区本郷に若手技術者が研究、開発できる拠点を開設した。書類審査や面接で選ばれた250人が活動し、全体の約7割が現役の東大生か卒業生だという。
仁木社長は16年まで親会社ソフトバンクGの投資部門責任者として多くのM&A(合併・買収)に関与し、ボーダフォン日本法人やスプリントの買収などを手掛けた。ディープコアでは現在、シード(準備)などごく初期段階の出資を行っている。
昨年4月に第1号ファンドを組成し、ソフトバンクGとヤフーのほか、みずほ銀行や電通、日本政策投資銀行、プロサッカー選手の本田圭佑氏の個人ファンドも出資した。今年5月時点の投資先は、映像解析による防犯事業を行うVAAK(バーク、東京・千代田区)や病理画像診断ソフト開発のメドメイン(福岡市)など18社。
仁木社長は、立ち上げから1年が経過した1号ファンドについて「順調なペース。エグジットまでかなり楽観的だ」とし、「2号、3号ファンドを作っていく予定」と述べた。2号ファンドは早ければ21年に組成し、60億円規模の第1号ファンドよりも大きくしたいと言う。
ソフトバンクGではAIやビッグデータ分析、ディープラーニング(深層学習)が専門で、ディープコアの技術顧問を務める東大大学院の松尾豊教授が新たな社外取締役に就く予定。本郷拠点では、松尾研究室の学生もメンバーとして活動している。
孫正義社長は5月の決算会見で、「AIはあらゆる産業を革新する。AIを使っている会社と使っていない会社では決定的に競争力、インテリジェンスが違う」と話した。ソフトバンクGは、主にユニコーンと呼ばれる評価額10億ドル以上の未上場成長企業に投資している。