[ニューヨーク 31日 ロイター] – ニューヨーク外為市場では、トランプ米大統領がメキシコの移民対策が不十分として同国の輸出品に関税をかける方針を示したことを受け、安全通貨としての円に買いが殺到し、円は対ドルで約1%上昇した。
トランプ大統領は前日、6月10日以降メキシコからの輸入品すべてに5%の関税を課し、移民の流入が止まるまで関税率を段階的に引き上げると表明。これを受け、メキシコペソが対ドルで一時3.4%下落し、1日としての下げは昨年10月以来の大きさとなった。
バノックバーン・グローバルフォレックスの首席市場ストラテジスト、マーク・チャンドラー氏は、トランプ大統領の関税方針を受け「メキシコペソが急落し、市場が全般的に『リスクオフ』となる中で円に買いが入った」と述べた。
世界的な通商を巡る緊張の高まりを受けて他の通貨も安全資産として買われてきたが、円には継続的に買いが入った。この日も安全通貨の中で円が特に選好された。円はドルに対し1.11%高の108.41円。ユーロに対しては0.75%上昇した。5月の円の上昇率は対ドルで2.72%、対ユーロで3.15%となる見通し。
スイスフランにも買いが入り、対ドルで0.69%高の1.0008ドルと、4月10日以来の高値に迫った。
ドルも安全通貨の1つとみなされているものの、この日の取引で主要6通貨に対するドル指数は0.34%下落。前週は2年ぶりの高水準を付けていた。ドル指数は月初からは0.4%上昇となり、月間ベースでの上昇は4カ月連続となる見通し。
米中貿易戦争の影響は中国の経済指標にも表れ始めており、中国国家統計局が発表した5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は景況拡大と悪化の分かれ目となる50を割り込み、市場予想も下回った。
一方、この日発表の米経済指標では4月の個人消費支出(PCE)価格指数が前月比0.3%上昇と、2018年1月以来15カ月ぶりの大幅な伸びとなった。
ただ前日は、連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長が、米経済は良好な位置に付けているとしながらも、景気が悪化すればFRBは政策を調整する用意があるとの見解を表明。 米金利先物はFRBが年末までに少なくとも1回の利下げを実施する可能性があることを織り込む水準にある。
ブランデーワイン・グローバルのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「ドルは主要な転換点に差し掛かっている可能性がある」との見方を示した。