【パリ時事】トランプ米大統領は6日、欧州歴訪の日程を終えた。第2次世界大戦で転機となった連合軍のノルマンディー上陸作戦から75年となる式典に出席し、大西洋を挟んだ米英仏の栄光の結束を誇示するのが外遊の主要目的だった。だが、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐるトランプ氏の発言などによって、むしろ双方が協調することの難しさを印象付けた。
97歳、パラシュートで降下=ノルマンディー作戦参加の元米兵-仏
◇「特別な関係」は相手次第?
メイ英首相は辞任を表明済みで、メディアの関心は既に次期首相がトランプ氏とどういう関係を築き、EU離脱後の英国とどんな貿易協定を結ぶかに集まっている。トランプ氏の関心事項も同じで、首脳会談で英国に早期のEU離脱を促し、新たな協定で米英間の貿易が「2倍にも3倍にもなる」と強調した。
さらに、訪問前には英メディアのインタビューで、強硬離脱派のジョンソン前外相について「(首相になれば)とても良い仕事をするだろう」と期待を表明。離脱党のファラージ党首をEU離脱交渉の担当者に起用するよう提言した。
その一方、労働党のコービン党首を「否定的な勢力」と見なし会談要請を拒否。首脳会談後の記者会見で「われわれの『特別な関係』は、共通の歴史、価値、文化、言語に根ざしている」と絆の強さを強調したが、特別な関係と言っても、英側の首相次第という印象を与えたことは否めない。
◇仏大統領は修復強調
フランスのマクロン大統領との会談でトランプ氏は、米仏関係について「良い時もそうでない時もあったが、今はずばぬけている」と述べ、このところ表面化していた亀裂の修復を強調した。マクロン氏も、米国との温度差が目立つイラン核問題への対処で「イランに核兵器を持たせないという目標は共通だ」と語り、米国への配慮を示した。
だが、米国が一方的に離脱したイラン核合意を尊重するフランスの立場に大きな変化はない。地球温暖化対策などでも米仏の温度差は明白。欧州結束を重視するマクロン氏にとって、むしろ欧州懐疑派に近い立場とも言えるトランプ氏と良好な関係を維持するのは容易でない。
ノルマンディー上陸作戦記念式典の演説で、マクロン氏はトランプ氏の方を向き「親愛なるトランプ大統領、他者の自由のために戦うときほど米国が偉大だったことはない」と語り掛けた。仏テレビはこの場面を指して、国際協調に無関心なトランプ氏に対して、マクロン氏が「さりげなく苦言を呈した」と伝えた。