イランを訪問中の安倍晋三首相は12日午後(日本時間13日午前)、ロウハニ大統領と首都テヘランで会談後の共同記者発表で「緊張緩和に向けて日本としてできる限りの役割を果たしたい」と述べ、米国とイランの対立激化に伴う中東地域の軍事衝突回避に向けて貢献していく考えを表明した。記者発表での両首脳の発言は以下の通り。
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ロウハニ師「私の招待に安倍首相がお応えいただいたことを光栄に思います。両国は伝統的な関係を有していますが、今年は両国の外交関係樹立から90周年です。今まで私たちは何回も会談を行い、今回で8回目となります。日本政府をはじめ、安倍首相が2国間の関係強化に関心を持っていることを歓迎します」
「今回の会談では日本のイランへの投資、イラン南部のチャバハル港などへの投資について話がありました。日本がイランとの経済的、技術的、文化的、科学的な関係を強めていきたいと希望していることに感謝します」
「また、治安の確保、地域の安定についても話をしました。私たちから戦争を始めることは絶対にありません。もちろん米国との戦争も望んでいないですが、しかし、もし、イランに対して戦争をすることになれば、私たちは厳しい答えを出すことになると思います」
「安倍首相は今回の訪問で、核合意への支持を改めて表明されました。私が安倍首相に申し上げたのは、私たちは核合意を維持していきたいということと、今、われわれがとっている措置は核合意36条に基づいているということです。イランと日本両国は原子力の平和利用を行っており、この分野でも両国は協力することができると考えます」
「今、この地域では軍事的緊張がみられますが、その原因は米国による経済的戦争(=米国による対イラン制裁)にあります。ですから、そうした経済戦争が終われば、地域の安定は確保できるということを申し上げました。安倍首相と日本政府関係者が地域の安定や緊張緩和を実現させるためにイランを訪問していただいたことに感謝します」
「また、私たちはさまざまな分野で意見交換し、両国の移民問題や麻薬取り締まり、テロとの戦いにおける協力についても話し合いました。シリア情勢やイエメン情勢についても意見を交わしました。安倍首相と日本政府関係者など、日本の皆さまのイラン訪問が素晴らしいものとなるよう期待しています」
安倍首相「イランと日本が外交関係を樹立して90周年を迎える今年、イランを訪問し、かくも温かい歓迎を受けたことを心から光栄に思い、ロウハニ大統領、そしてイラン国民の皆さまに心から感謝申し上げます」
「長い道のりでした。前回、日本の首相が(イランの首都)テヘランを訪問してから41年もの月日を経てからの訪問となりました。この間のさまざまな国際環境の変化、幾多の出来事。イラン国民と日本国民はそれぞれの思いで、一言では言い表せないさまざまな思いをかみしめながら、時には複雑な感情を押し殺しながら、歴史ある国同士、古い歴史に誇りを持つ文化大国として、目に見えない心の交流を絶やすことなく続けてきたのだろうと私は思っています」
「私がテヘランを訪問するのは36年ぶりのことです。当時外相であった父とともに訪れ、テヘランの悠久の歴史を感じさせる威厳ある町並み、そしてイラン国民の本当に心温まる歓迎は当時まだ20代の若者だった私にとって大きな感動であり、今も忘れえぬ思い出です。まさに30年来の思いが実り、古い友人と再会を果たすことができた。そのような気持ちでいま私はこの場に立っています」
安倍晋三首相「本日この場で私がイランの皆さんに発信する言葉は決して皆さんにとって、耳心地のよいものばかりではないかもしれません。しかし、私は皆さんの力になりたいからこそ申し上げるのです」
「現在、中東において緊張が高まっています。偶発的な紛争が起きるかもしれないと指摘する専門家もいます。しかし、何としても武力衝突は避ける必要があります。中東の平和と安定はこの地域のみならず、世界全体の繁栄にとって不可欠です。誰も戦争は望んでいません。緊張緩和に向け、日本としてできる限りの役割を果たしていきたい。この一点で私は今回イランを訪問しました」
「イランは古代ペルシャ帝国の時代から今日に至るまで中東の大国であり、将来にわたってもそうあり続けるでしょう。昨今の緊張の高まりの中で、この地域がさらに不安定化したり、偶発的な衝突が起こることのないよう、中東の平和と安定を確固たるものとする上で、イランが建設的な役割を果たすことが不可欠です」
「イスラムは平和と寛容の教えであり、私は中庸が最善とのイスラムの精神に感銘を受けます。ハメネイ最高指導者が『核兵器などの大量破壊兵器はイスラムに反する』とたびたび表明されていることに深い敬意を表します。イランが国際原子力機関(IAEA)との協力を継続していることを高く評価し、イランが核合意を引き続き順守することを強く期待しています」
「本日はこのような基本的立場に立って、ロウハニ大統領といかにして現下の緊張を緩和し、偶発的な紛争を避けることができるか。いかにしてこの地域の不安定化を防ぎ、平和と安定を追及すべきかなどについて、率直かつ有意義な意見交換を行いました。そして、先般の洪水被害への緊急人道支援などを始め、医療や難民支援などイラン国民が裨益(ひえき)する協力を日本として引き続き行っていく考えをお伝えしました」
「ここまでの道のりは長かった。でも、ここからの道のりは広くて見晴らしのよい、景色のよい道になるはずだと私は確信しています。そのためにお互いが努力をしなければなりません。それは、かなり忍耐のいる努力だと思います。それでもなお中東地域、そして世界の平和のためにそれはやり遂げなければならない。そのために日本はこれからも決してあきらめることなく、できうる限りの役割を果たしていく決意です。今日はその最初の第一歩となると確信しています。また、いつでもお会いしたいし、そしてその次の機会がそう遠くないことを確信しております」(テヘラン 沢田大典)