[東京/ソウル 1日 ロイター] – 政府は1日、韓国向け半導体材料の輸出規制を強化すると発表した。元徴用工訴訟に関する対抗措置ではないとする一方、同訴訟をめぐって日韓の信頼関係が崩れたことが背景にあると説明。韓国側は世界貿易機関(WTO)ルールに違反するとして強く反発している。
<輸出管理上の不適切な事案が理由、対抗措置ではない>
経済産業省は1日、フッ化ポリイミドなどの半導体材料3品目の韓国への輸出について、7月4日から契約ごとに審査・許可する方法に切り替えると発表した。韓国に関する輸出管理上のカテゴリーを見直し、手続き簡素化の対象国である「ホワイト国」から外す方向で政令改正の手続きに入る。
この措置について同省では、元徴用工訴訟を巡る外交関係を背景に韓国との信頼関係が崩れ、輸出管理上の「不適切な事案」が発生したことを理由に挙げている。「韓国に関連する輸出管理上の措置であり、対抗措置ではない」と説明する。
西村康稔官房副長官も1日の会見で今回の措置は元徴用工訴訟を巡る対抗措置ではないとの認識を示し、「自由貿易に逆行するものではない」と語った。
<「WTO提訴を計画」と韓国>
韓国の成允模・産業通商資源相は、日本の輸出規制強化は「報復措置」だとして、「深い遺憾の意」を表明。世界貿易機関(WTO)への提訴を計画していると明らかにした。 また聯合ニュースによると、韓国外務省は長嶺安政・駐韓大使を呼び、抗議した。
今回の措置は、エレクトロニクスや半導体製造用の材料で日本製品のシェアが高いフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3品目について、包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求めるもの。これまでは3品目に関する韓国への輸出手続きでは、簡略化する優遇措置が採用されていた。
また、輸出管理上の国別カテゴリーにおいて、手続き簡素化の対象となる「ホワイト国」である韓国を対象から外す方針。対象除外に向けた手続きとして、政令改正に向け7月下旬まで意見募集の手続きに入る。8月下旬をめどに実施する方針を公表する見通し。同省によると、「ホワイト国」の対象となっている国が、除外されるのは過去に例がない。
日本の企業の中にも韓国向けの輸出制限の影響が広がる可能性があるが、同省は「産業界への影響については十分注視していきたい」と述べるにとどめた。
韓国最高裁が昨年10月、日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟の判決を受け、原告側は日本企業の韓国内の資産売却の手続きを進めている。日本は日韓請求権協定に基づき、韓国側に仲裁委員会の開催を求めていた。
先週末に大阪で行われた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)では「無差別で透明性がある貿易、投資環境の実現に努力する」ことを盛り込んだ首脳宣言を採択。安倍晋三首相は「自由貿易の基本原則をG20で明確に確認できた」と発言していた。