[ワシントン/北京/上海 6日 ロイター] – 米中貿易戦争が泥沼化の様相を呈する中、トランプ米大統領は6日、米国が「極めて強い立場」にあるとし、中国との対立を巡る懸念を一蹴した。一方、中国政府は、同国を為替操作国に認定した米政府の決定は金融市場の混乱を招くと警告した。
トランプ大統領はツイッターへの投稿で「安全性、投資、金利などの理由から多額の資金が中国やその他の国から米国に流入している!」と強調。「米国は極めて強い立場にある」と述べた。
米政府は5日、中国を為替操作国に認定した。中国が10年超ぶりの元安水準を容認したことを受けた措置。
これに先立ち、トランプ大統領は先週、3000億ドル相当の中国製品に対して9月1日から10%の制裁関税を課す意向を発表。中国が米農産品の購入を停止した背景がある。
中国人民銀行(中央銀行)は米政府の決定に対し「国際金融秩序に深刻な打撃を与え、金融市場に混乱をもたらす」と反発。「世界経済・貿易の回復を阻害する」と批判した。さらに、中国は「貿易問題に対処する手段として為替相場を利用したことはないし、これからも利用することはない」と表明。「米国に対し、自らの過ちに気づき、誤った道から引き返すよう助言した」としている。
人民元は前日、2008年5月9月以来初めて1ドル=7元を超える元安となった。 米中貿易摩擦解消への期待が後退する中、世界株安となり、米株価主要3指数の下落率はそろって年初来最大となった。
6日の取引では、元は前日の急落から下げ止まっている。中国国内市場の人民元CNY=CFXSは0.2%高の7.0321元でこの日の通常取引を終了。オフショア人民元CNH=D3は約0.7%高の7.0522元。
こうした中、カドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、トランプ大統領が中国との貿易交渉継続を望んでおり、政府としてさらなる協議に向け9月に中国の使節団を迎えることを依然検討していると語った。
カドロー委員長はCNBCテレビとのインタビューで「大統領は(中国との)取引(ディール)を望んでいる」とする一方、それは「正当な取引」でなければならないと強調した。
また、米中貿易摩擦の影響が世界の製造業活動を減速させているとの懸念が強まっているものの、「米経済は実に堅調だが、世界の他国の状況は異なる。米国が前進するためのエンジンとなっている」と言明。その上で、世界景気後退の「兆候は見られない」と述べた。
中国を為替操作国に認定する決定については、人民元が昨年4月以降10%下落していることを踏まえ、認定せざるを得なかったと説明。中国が違反を続けるのであれば、「行動を取る必要があり、中国が自ら招いた結果」とした。
中国共産党機関紙・人民日報傘下の国際情報紙「環球時報」は米政府の決定について、「怒りを吐き出す」ための政治的動機に基づいた行動に過ぎないと報じた。
貿易摩擦がエスカレートの兆しを示す中、レアアース(希土類)が今後、通商協議の焦点となる可能性がある。中国国営メディアはこれまでに、中国が通商交渉を有利に運ぶためにレアアースを切り札に使うことが可能とけん制している。
またアナリストは、中国政府が今後、同国内で事業を展開する米企業への圧力を強める可能性があると指摘している。