[23日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は23日、ワイオミング州ジャクソンホールで開催中の経済シンポジウムで講演し、米経済は「良好な立場」にあり、FRBは足元の景気拡大を維持すべく「適切に対応」すると表明した。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを行うかについては明言しなかった。
市場関係者のコメントは以下の通り。
<ウエストパックの外為戦略責任者、リチャード・フラヌロビッチ氏> 第一報を見る限り、リスクを注視している連邦準備理事会(FRB)と意見が一致しており、景気拡大や継続的な回復を支援するために必要なことを行う準備ができているようだ。特に新しい内容ではなく、パウエル議長の従来の発言通りであり、外為市場の反応はかなり静かだ。
市場の想定通りの講演内容だったのかは分からないが、2─3回の追加利下げが見込まれていたならば、今回の講演内容によってこの期待が後退するようには思えない。パウエル議長は必要なら一段の行動を起こす準備ができており、緩和に対する期待感を強固にした。
<TD証券(ニューヨーク)の金利ストラテジスト、ゲンナディー・ゴールドバーグ氏> パウエル議長はトーンを変えなかった。連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で示されたのと同じような議論を展開し、自分自身の考えを表明するよりも、むしろFOMCの立場を代弁した。
興味深かったのは、7月のFOMC以降に発生したすべてのリスクについて言及したことだ。これにより、FRBが次回9月のFOMCで追加利下げを決定するとの観測が市場に織り込まれることを容認したと推察される。ここで問題になるのが「適切に対応する」との文言だ。これは9月に追加利下げが決定される公算が大きいことを示している。
残念な点は、パウエル議長が世界的な不確実性の高まりを踏まえ、一段の利下げに対するコミットメントを示さなかったことだ。つまり、FRBはフォワードガイダンスのようなものは提示せずに、利下げにその都度対応していくものとみられる。
<ケンブリッジ・グローバル・ペイメンツのグローバル市場戦略部門ディレクター、カール・シャモッタ氏> パウエル議長は「現在の状況に対する政策対応の指針となる直近の前例は存在しない」とし、連邦準備理事会(FRB)が未知の領域を航行していると強調した。これはFRBが引き続き対応策を模索中であることを示唆している。市場は向こう数カ月間で発表される経済指標に対し決定論的な政策ルールを適用すべきではない。
全体的に見て、市場は今回の講演内容に対し「パウエルプット」が依然健在であると受け止めるだろう。引き続き経済が鈍化すれば、FRBが金融緩和ペースを減速する可能性は低い。さらなる緩和が予想され、年内にあと2回の追加利下げが実施される確率は高水準を維持するだろう。