[ワシントン 6日 ロイター] – 米労働省が6日発表した8月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数の伸びが13万人と、市場予想の15万8000人を下回った。小売業が7カ月連続で落ち込み、雇用全体の足を引っ張った。一方、賃金は前月比の伸びが拡大するなど明るさも見られた。
平均週間労働時間も製造業部門にけん引され増加に転じ、通商を巡る緊張が高まる中でも、堅調な消費が米経済の緩やかな拡大継続を下支えしていくとの見方が裏付けられた。
失業率は3.7%と、3カ月連続で前月から横ばい。8月は57万1000人が新たに労働市場に参入した。
時間当たり平均賃金は28.11ドルと、前月の28.00ドルから0.4%増加。伸びは前月の0.3%から加速し、2月以来の大きさとなった。前年比では3.2%と、前月の3.3%からやや減速したものの、前年比での伸びは13カ月連続で3.0%、もしくはこれを上回る水準で推移しており、個人消費を下支えしている。
平均週間労働時間は34.4時間と、約2年ぶりの低水準となった前月から増加に転じた。
労働参加率(生産年齢人口に占める働く意志を表明している人の割合)は63.2%と、7月の63.0%から上昇。現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は7.2%と、約18年ぶりの低水準となった7月の7.0%から上昇した。
6月と7月を合わせた非農業部門の雇用者数の伸びは当初発表から2万人下方改定された。
8月の雇用者数の伸びについては、過去数年間は当初の数字が低調となった後に上方修正される傾向があり、今回も予想を下回った背景には季節要因がある可能性がある。
ただ米供給管理協会(ISM)が3日公表した8月の製造業景気指数が49.1と、2016年8月以来初めて景気拡大・縮小の節目となる50を割り込むなど、雇用の伸びの減速は一部経済指標の悪化と歩調を合わせてはいる。
フィッチ・レーティングス(ニューヨーク)の首席エコノミスト、ブライアン・クルトン氏は今回の雇用統計について「米経済成長の鈍化と矛盾しない」と指摘。ただ「景気後退(リセッション)入りが差し迫っていることを示すものではない」との見方を示した。
8月は広範な業種で雇用増のペースが鈍化。政府部門は2020年の国勢調査関連の臨時雇用で伸びたものの、民間部門雇用者数の伸びは9万6000人にとどまった。
製造業は3000人増と、前月の4000人増から減速。月平均の増加数は今年に入ってからは6000人と、前年の2万2000人から大きく減速している。
製造業の平均週間労働時間は0.2時間増の40.6時間。ただ残業時間は0.1時間減の3.2時間となった。
建設業の雇用者数は1万4000人増と、前月の2000人減から反転。ただ小売業は1万1100人減と、2月に始まった減少に歯止めがかからなかった。
専門職・企業サービスは3万7000人増。ヘルスケア、娯楽、金融、卸売りも増加したが、公益事業は減少した。
政府部門は3万4000人増。来年の国勢調査のために2万5000人の臨時雇用があったことが押し上げ要因となった。